社説

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 参院選はきょう投開票日を迎えた。政権選択につながる選挙ではない。だが結果次第では、戦後の平和主義を支えてきた日本国憲法が重大な岐路に立つ。その重みもかみしめながら、1票を投じたい。

 憲法改正に前向きな自民党、日本維新の会、国民民主党と、「加憲」を掲げる公明党で形成する改憲勢力が国会発議に必要な総議員の3分の2以上を確保するかが焦点となる。

 先の国会は、維新の伸長などで衆院憲法審査会が定例化した。自民の茂木敏充幹事長は公示前に「選挙後、改憲原案を国会に提出したい」と述べ、手続きを加速する構えだ。

 問題は、争点と位置づけておきながら、選挙戦で具体的な主張を深めようとしなかった点にある。

 各党は生活に直結する物価高対策や、ウクライナ危機に呼応した安全保障の訴えに力点を置き、改憲勢力側からも憲法の何をどう変え、どんな国を目指すのかといった訴えは、ほとんど聞かれなかった。

 共同通信の公示前の世論調査で、何を重視して投票するかで「憲法改正」は3%にとどまり、国民に改憲の機運が高まっているとは言えない。公示後の世論調査では、岸田政権下での改憲への賛否はともに44%台で拮抗(きっこう)する。国のかたちに関わる憲法を変える議論を、国民を二分する状況で進めるのは避けるべきだ。

 自民は公約で、9条への自衛隊明記や緊急事態対応など改憲案4項目を早期に実現するとした。維新は自衛隊明記、国民は緊急事態条項創設などで歩調を合わせ、公明は自衛隊明記の「検討を進める」とした。

 「論憲」を唱える立憲民主党は、首相の解散権制約などの議論を深めるとした一方、自衛隊の明記には反対する。共産、社民両党は護憲を訴え、れいわ新選組も改憲には否定的だ。NHK党は論議を促すとした。

 歴代政権の憲法軽視の姿勢も問われる。安倍政権による集団的自衛権の行使容認は違憲の疑いが指摘される。憲法に基づく野党の臨時国会召集要求に応じない手法は、菅政権も継承した。岸田政権は、高まる安全保障上の懸念に乗じ、憲法に基づく専守防衛を逸脱しかねない「反撃能力」の議論にも前向きだ。

 選挙最終盤に起きた安倍晋三元首相銃撃事件は、憲法が保障する言論や思想・信条の自由を尊重しない者の存在をあらわにした。意に沿わない相手は排除する。そんな風潮の表れとすれば事態はより深刻だ。

 分断と抑圧の時代に針を戻さないために、自由と平和を希求する憲法の理念を実現する道を模索するときだ。最終的に国のかたちを決めるのは私たち一人一人である。

 その意思を示す日にしたい。

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