後発薬の不足/供給と品質管理の強化を
2022/09/15 06:00
ジェネリック医薬品(後発薬)メーカーの不祥事などの影響で薬の供給不足が長期化し、品質不正の発覚から2年半たった今も解消のめどが立たない。新型コロナウイルスの流行「第7波」拡大後は、解熱剤や鎮痛剤、のど・せきの薬が急速に品薄になり、患者らに対応する医療機関や薬局が入手に苦慮している。
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新薬の特許が切れた後に製造される後発薬は、開発費が少額のため安価で手に入る。昨年9月時点の使用割合は約8割と10年間で倍増し、医療費抑制には欠かせない存在となった。安定供給の回復は急務である。
後発薬の不足は、2020年以降に相次いで発覚した製造工程の不正が発端となった。小林化工(福井県あわら市)では爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤が混入し、健康被害が出て事業から撤退した。大手の日医工(富山市)も品質管理の不正が発覚し、主力工場で扱う医薬品の約4割の製造が再開できていない。
不正発覚に加え、不足の要因になっているのはメーカー側の「出荷調整」だ。今年初めに国が実施した調査では、従前以上の供給量がある薬も、メーカーが得意先への納入を優先して品薄になる実情が分かった。業界には早期の是正を求めたい。
神戸市薬剤師会の安田理恵子会長は「後発薬の不足を機に、先発薬や市販薬も品薄になった。これほど入手に苦労したことはない」と話す。
薬剤師会は市と連携し、新型コロナ軽症者の服薬相談にオンラインで応じている。「家庭の常備薬などの活用を勧め、妊婦らも使える安全な鎮痛剤を切らさないように心がけている」と安田会長は強調する。
現場でのこうした工夫には限界がある。不足の常態化を避けるには、医薬品全体の供給状況を把握する仕組みが欠かせない。海外ではデータベースなどで情報を公開する制度もある。国は医療関係者の不安を解消し、過剰な発注を抑えるべきだ。
品質管理の強化も重要だ。業界団体の自主点検では、加盟社の8割で製造を巡る不備があった。不正の再発防止に向け、業界では品質管理を外部機関がチェックする仕組みづくりを進める。官民が連携して検査を徹底する必要がある。
問題の背景にはメーカーの経営基盤の脆弱(ぜいじゃく)さもある。多種類を少量ずつ製造するため工場のラインを使い回し、急な増産が難しい。また後発薬の価格は原則、先発薬の半額に設定され、さらに薬価改定のたびに下がるため利益を得にくい。原料の多くを中国やインドから輸入し、値上げなどに影響される点も課題だ。
国はメーカーの経営強化や再編を支援し、安全な後発薬を安定供給できる基盤づくりを進めてほしい。