金融緩和の継続/為替介入と矛盾しないか
2022/09/27 06:00
米国をはじめ各国の中央銀行が金利を上げる中、日本銀行は大規模金融緩和の継続を決めた。
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黒田東彦(はるひこ)総裁は「新型コロナウイルス禍からの回復途上にある経済を支える必要がある」と述べ、併せて今後2~3年は利上げしないとの考えを示した。
主要国でマイナス金利を導入している国は日本だけとなった。景気回復が遅れ、金融政策でも世界から取り残された状況だ。
日銀が景気の下支えを優先するのは理解できる。しかし、長年にわたる「異次元」の緩和は弊害も目立つ。円安の長期化は物価高を招き、家計や企業を直撃している。経済の実情を踏まえ、政策の見直しを視野に入れる必要がある。
先週、米連邦準備制度理事会(FRB)は6、7月に続いて通常の3倍となる0・75%の利上げを決定した。その後に日銀が金融緩和の続行を発表し、運用に不利な円を売る動きが市場で加速した。
今月22日、円相場は一時1ドル=145円台後半まで急落し、政府と日銀は円を買ってドルを売る為替介入に踏み切った。円買いは24年ぶりで、日本の単独介入だった。
円安の急激な進行を阻止するために、「最後のカード」を切るところまで追い込まれたといえる。
鈴木俊一財務相は「投機による過度の変動を見過ごすことはできない」と強調した。介入後、一時は1ドル=140円台に上がった。為替介入をちらつかせる「口先介入」から大きく踏み込んだことで、投機筋への一定のけん制にはなったようだ。
ただ、連休明けのきのうは、再び円安の方向に振れた。鈴木財務相は追加介入に踏み切る可能性も示唆するが、円安基調を変えるには力不足と言わざるを得ない。
そもそも金融緩和は円安に傾きやすく、円買い介入の効果を打ち消しかねない。政府が持つドルや米国債が介入の原資となるため、使える額には限度がある。介入効果の持続性には疑問符が付く。
先進国で利上げ競争の様相となっているのは、空前のインフレに直面し、物価抑制を優先しているからだ。金利上昇は景気を冷え込ませる恐れがあるが、FRBは利上げの継続方針を明確にした。世界経済の減速が懸念される。
日本にとって重要なのは、円の実力を高める抜本的な方策である。
脱炭素やデジタル化への対応などで製品やサービスの付加価値を向上させ、持続的な賃上げにつなげる企業努力と政府の後押しが求められる。地方を中心に労働力不足が顕在化しており、職業訓練の拡充など人への投資を一層進めねばならない。