村上選手の快挙/56号と最年少三冠に拍手
2022/10/06 06:00
プロ野球ヤクルトの村上宗隆選手が、レギュラーシーズンの今季最終戦で56号本塁打を放った。1964年に王貞治さん(巨人)が打った55本を58年ぶりに抜き、日本選手のシーズン最多記録を更新した。
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さらに、打撃主要3部門のタイトルを独占する三冠王も獲得した。22歳での達成は、落合博満さん(ロッテ)の28歳を上回る最年少記録だ。三冠王は8人目、松中信彦さん(ダイエー)以来18年ぶりとなる。
二つの大記録を同時につかむというのは、驚嘆に値する快挙である。村上選手には米国からも称賛が寄せられている。国内外の野球ファンとともに心から拍手を送りたい。
2年連続の本塁打王に加え、打率が3割1分8厘、打点が134で、首位打者、打点王にもなった。4割5分8厘の出塁率も最高で「4冠」だ。とてもプロ5年目の数字とは思えない。ファンが「村神様」と敬意を込めて呼ぶのもうなずける。
今季のホームラン量産は順調だった。7月31日の阪神戦から史上初の5打席連続本塁打を記録し、8月11日には40号、9月2日には50号を放った。同13日には55号のアーチを描き、王さんの大記録に並んだ。
ところがここから苦しむ。凡退の打席が続き、13試合本塁打を打てなかった。10月3日、神宮球場での最終戦・DeNA戦では、4打数無安打であれば打率が抜かれる状況だった。その土壇場で2打席目に安打を打ち、最終4打席目を迎える。そして初球を右翼席にたたき込んだ。
試合後、村上選手は「プレッシャーはあったが、全ていい形で終われてうれしい」と笑顔を見せた。重圧をはねのけ、劇的な結末を見せた強い精神力には脱帽するしかない。
打撃の内容で特筆すべきは、広角に打ち分け、どの方向にも本塁打を飛ばせる技術の高さだ。主にライト方向に本塁打を打っていた王さんも「彼の技術は若い選手の中でずぬけている」と絶賛する。
熊本県出身の村上選手は幼いとき野球好きになり、小学生から熱心に練習してきたという。中学生時代には、目標にした15歳以下の日本代表から外れて悔し涙を流したが、九州学院高校で甲子園出場を果たした。積み重ねた地道な努力が今の実績につながっているに違いない。
高校生だった2016年には熊本地震を経験した。熊本城の復興支援として、本塁打を打つごとに一定額を寄付している。郷里への感謝を忘れない姿勢にも感心させられる。
村上選手は「これから続けていくことが大事」と先を見据える。プロ野球記録の60本を超える本塁打も期待したい。22歳のスラッガーには決して夢ではないだろう。