企業立地/生産と物流の強み生かせ
2022/10/16 06:00
兵庫県の企業立地動向を見ると、物流拠点の進出が目立つ。巨大IT企業のGAFA(ガーファ)の一角、アマゾンが尼崎に大規模物流拠点を開設したのをはじめ、シンガポール系の不動産資本、日本GLPは尼崎市の古河電気工業の工場跡地に関西最大級の施設を建設する。米系のプロロジスや香港系のESRの動きも急だ。
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兵庫は「ものづくり立県」と呼ばれるが、物流拠点の相次ぐ進出が地域経済にどう影響するか。企業誘致に取り組む自治体は長期的な視点で精査し、活力ある将来像を描いてほしい。
これまで物流拠点は無機質で隔絶された空間といった印象があったが、大きく様変わりしている。インターネットの進展で多品種少量のモノを速く届けることが大前提となり、交通アクセスがよく、人材も確保しやすく、何よりも取引先や市場に近い消費地に立地するようになった。機能も従来は荷役、包装、保管などが主体だったが、部品の組み立てや保守点検などの生産的な機能を併せ持つケースも出ている。
とはいえ、物流拠点はモノを生産する工場とは基本的に性格が異なることは再認識したい。製造業の工場は、雇用はもちろん、技術開発や生産、販売、出荷を通じて地域経済の重要な担い手になる一方、部品調達などで地元の中小企業との取引を通じて地域に技能と資金が回る。こうした好循環によって、多彩な製造業が培われてきた。
兵庫への工場立地件数は、新型コロナウイルス禍の影響もあり3年連続で減少していたが、2021年は48件と前年比9件増えた。都道府県別では6位で、近畿で最も多い。立地面積は50・8ヘクタールで同2・5ヘクタール増加した。業種別では、金属製品が14件、食料品が6件、プラスチック製品が5件-などと続く。
円安や原料高など取り巻く環境はことの外厳しいが、日本のものづくりを支えるのは変化に対応できる強い工場に他ならない。生産と物流は密接な関係にある。物流基地として強化された機能を生かし、付加価値の高い製品を需要に合わせて迅速に運ぶ。地元の人材や中小企業の活力を生かし、地域経済の底上げにつなげるべきだ。