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北播磨地域は豊大な平野が広がり、多彩な地場産業が栄えてきた

 東経135度と北緯35度が交差する北播磨地域。地理上の日本の中心地に位置し、西脇、三木、小野、加西、加東の各市と多可郡多可町の5市1町からなる。兵庫県で最大の加古川が流れ、豊穣な播州平野が広がる恵まれた環境にあり、古来より多彩な地場産業が栄えてきた。モノ作りの伝統は今に引き継がれ、世界に誇る技術力を備えた企業がいくつもある。山陽自動車道、中国自動車道といった高速道路が東西を貫き、南北をつなぐ道路の整備も着々と進む。交通網が充実し、高い技術力を持つ地元企業も多く、経済発展の可能性が高い地域として、あらためて全国から注目が集まる。「日本のへそ」とも呼ばれ、成長を続ける北播磨地域。名実ともに兵庫県の中心地として存在感を高めている。


地場産品(播州織、三木金物)
地場産品(家庭刃物、播州そろばん、釣り針)

播州織や金物、釣り針… 全国屈指の地場産業

 北播磨地域は、兵庫県の真ん中に位置し、面積は県土の1割を占める。人口は約27万人。加古川と播州平野の恵みで古くから栄え、エリアごとにさまざまな地場産業がある。
まず、播州織。糸を染めてから織り上げる独特の製法で、西脇市、多可町を中心に関連業者が集積する。200年以上前の江戸時代中期に京都西陣の織物技術をもとに生まれたとされ、明治後期から「播州織」と呼ばれるようになった。加古川などの豊かな水源が、染色に適した軟水を提供している。今も国内先染め織物の70%以上のシェアを占める。
 三木市の三木金物は、大工道具が中心。1580(天正8)年の三木城落城の後、復興のために大工が集まり、鍛冶職人が定着したことが起源という。
 隣接する小野市が基盤の家庭刃物(小野金物)は、はさみ、鎌、包丁、カミソリなどが中心。家内工業だったが、明治以降に複合材の開発で品質が向上したことから、製品が全国へ広がった。
 釣り針や毛針の業者は、加東市と西脇市から丹波市にかけて点在する。これらの生産者で全国生産量の85%を握る。最近は中国など海外での需要が急激に拡大。繊細な針先の加工技術は世界に誇れるものだ。
 播州そろばんは、小野市が生産拠点。1976(昭和51)年に国から伝統工芸品の認定を受けた。現在も全国シェアの70%を占め、洗練された品質に、中東など海外での人気も高い。


播州織の魅力に引きつけられた若者たちが働く玉木新雌さんの工房

進化する「ものづくり」

 兵庫県で屈指の地場産業集積地である北播磨。ものづくりの伝統はしっかり引き継がれ、最近は新たな動きも目立つ。

▽若き才能

 播州織は近年、若手の経営者やデザイナーが増え、新たな活力が吹き込まれている。その代表格が「tamaki niime」ブランドでショールなどを創造する玉木新雌(にいめ)さん。播州織の魅力にひかれ、大阪から西脇市に移住して工房を構えた。旧式の織機が作り出す柔らかな風合いを生かした作品は、国内外にファンを広げる。播州織の魅力と可能性に引きつけられた多くの若者が、工房で働く。
 今年4月、播州織に関わる若手デザイナーや研修生らがアイデアを形にするための共同作業場「コワーキングスペース」が、行政の支援によって西脇市内で開所した。ミシンやデザインシステムなどがそろい、交流場所も備える。新製品開発に向け、日々、関係者が集っている。

▽伝統芸能

金物産業でも、デザインの工夫や海外市場への積極展開などの動きが活発だ。
 三木金物では、日本独自の「ロリータ・ファッション」を取り込んで開発された包丁が話題となっている。ウサギや蝶などの装飾が特徴で、伝統の技術力を生かした。小野金物でも、伝統のにぎり鉄などをしゃれたデザインにした製品が、順調に売り上げを伸ばしている。
 こうした努力の成果は着実に現れている。三木・小野の金物生産高は2011年で約500億円だったが、15年は610億円に増えた。いずれも海外向けがとくに好調という。

▽中小企業

 一方、北播磨地域を拠点とする地元の中小企業も存在感を高めている。
 伊東電機(加西市)は物流倉庫で利用されるコンベヤ駆動用モーターローラでは世界7割のシェアを誇るグローバル企業だ。高級ストーブ製造の千石(同)は、北欧・欧米を中心に販路を拡大しているほか、最近は高級オーブントースターでも国内市場を席巻している。藤原産業(三木市)は、伝統産業の日本剃刀の生産からスタートし、大工道具・DIY用品で高いシェアを持つ。いずれも伝統の技術に磨きをかけつつ工夫を加え、積極的に国内外の市場を開拓している。

斬新なデザインが特徴のロリータ包丁
コンベヤ駆動用モータローラで世界7割のシェアを誇る「伊藤電機」
国内市場を座巻する「千石」の高級オーブントースター

地域活性化へ官民連携

 多くの地元企業が業績を伸ばす一方、地域の高齢化や人口流出などによる人手不足は深刻化している。このため、行政機関は若者の定着や移住促進などを中心としたさまざまな地域活性化策に力を入れている。
 北播磨県民局は本年度も、就職の参考にしてもらおうと、地元企業の魅力などをPRするガイド本を作成し、県内外の大学や高校などに配布する。さらに、地元企業の製品を紹介する展示説明会を、管内の高校で開催。さらに各地の大学と地元企業との就職情報交換会を開催するなど、地元企業の人材確保を支援している。
 このほか、人口流入などを期待して企業誘致にも力を入れる。これまでの工場立地は順調で、地域内の17産業団地は今年1月に完売。このため、2016年度から県企業庁と小野市の共同事業により新たに小野市市場地区に約40ヘクタールの新産業団地を造成している。
さらに、地域経済の発展と暮らしの向上に欠かせない道路網のいっそうの整備も進んでいる。国道2号加古川バイパスと国道175号を結ぶ東播磨道の北工区事業(加古川市八幡町―小野市池尻町)は2021年度末の供用開始を目指す。山陽自動車道、中国自動車道という東西を貫く高速道路に加え、南北道路も着々と延伸し、地域の発展を後押ししている。

加西の製造業が飛躍の鍵

拓殖大学政治経済学部教授 山本尚史氏

 地域経済活性化には、地域外からの経済ショックから立ち直る「回復力」が鍵となる。リーマンショック不況で各市が受けた影響およびその後の変化を分析した最近の研究から、工業における回復力のある市について興味深いことがわかった。分析結果によれば、全国813市のうち半数以上の都市において、地域経済の根幹である各種の製造業がリーマンショックから負の影響を受け、しかもそこから回復できていない。その一方で、リーマンショックから負の影響を受けつつも回復を遂げた都市が全国で10市あることも判明した。その中に加西市がある。
 加西市は、製造業が市内総生産額と従業者数において約半数を占める、製造業に特化した都市である。産業構造の特徴としては、電気機械器具製造業に加えて、金属製品製造業、汎用機械器具製造業が有力である。また、就業者数に対する生産工程・労務作業者の割合と、生産工程従事者の割合とが、いずれも全国平均を大きく上回っている。加西市の強みは、製造業の産業集積があること、高い技術力や独自のノウハウを持ち進取の精神にあふれる中小企業が多数存在していること、災害面でのリスクが少ないこと、などにある。その反面、従業者一人あたりの製造品出荷額では、近隣の加東市、福崎町、神河町に後塵を拝している。また、市内企業での雇用は北播磨3市と比較して高い水準で安定しているものの、失業率は市川町に続いて高い状態である。
 加西市の製造業は、労働生産性を高めることにより更なる成長を遂げる可能性がある。既に商工会議所などによる取り組みがなされており、今後の展開に期待したい。

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