アートの新風 交流育む 新宮晋氏×井戸敏三氏

風や水で動く彫刻作品で世界的に知られる造形作家の新宮晋さんを県公館に迎え、
井戸敏三・兵庫県知事と芸術文化の力や自然との調和などについて語り合った。

高曽根里恵さん

司会 高曽根里恵・兵庫県広報専門員

新宮晋氏

高曽根

明けましておめでとうございます。昨年3月には県立美術館で「新宮晋の宇宙船」と題した展覧会が行われました。

新宮

美術館そのものを一つの作品として考えれば何かチャレンジできるのではと思い、会場の図面を見ながら新たに作ったものばかりを並べました。

井戸

安藤忠雄さん設計の大きな空間が、作品群にマッチしていましたね。

新宮

会場に一歩踏み込んだ時からドラマが始まり、宇宙船と名付けられた空間を移動して、外へ出た時には物の見方が変わっているような展覧会にできればと考えました。5月に宇宙船は初めて日本を離れ、ルクセンブルクに飛んでいきます。

高曽根

新宮さんの作品は、風にもいろいろな吹き方があると教えてくれます。

新宮

人は生まれながらにして風を感じているので知った気になっているし、普段、思いをはせることもありません。それが残念だから、少しでも風を感じてもらおうとあの手この手を使って作っているわけです。

井戸敏三氏

高曽根

日本を代表する洋画家の小磯良平さんのもとで絵画を本格的に学ばれました。小磯さんは遠縁に当たるそうですね。

新宮

はい。「そんなに絵が好きなら」と連れて行かれたのが、小学4年生くらいの時です。高校でも 絵を描き続けていたら、小磯先生が東京芸術大学の教授になられて。えこひいきが大嫌いな人でしたから、 「成績が駄目なら芸大はきっぱり諦めてほしい」と言われました。ところが割といい成績で通ったものですから、 小磯先生の悩みが始まって。

井戸

それは新宮先生の挑戦の始まりでもありますね。

新宮

ええ。小磯先生に憧れながらも、ある時から先生みたいにはなりたくないと思うようになり、先生から離れたくてイタリアへ逃げたのです。ところが、そこへ先生がやって来られて。でも、お世話をしているうちにお互いに気が楽になりました。特に、僕が絵をやめて立体作品へと移ったら、すごくご機嫌でした。

高曽根

立体作品へと移ったきっかけは。

新宮

自分はうまくないな、これではあかんと思いながら絵を描いていると何やら面白い形ができてきて。そこだけを切り出してみたところから、立体を作るようになっていきました。

雲の階段 星の海

三田の自然 創作を刺激

高曽根

アトリエのある三田市はいかがですか。

新宮

自宅との行き帰りの間に自然豊かな田園風景を眺めていたら、アイデアがどんどん湧いてきます。

高曽根

三田市を含む北摂5市町に広がる里山について、県では「北摂里山博物館」として保全や活性化に取り組んでいますね。

井戸

人々の生活が営まれている自然界全体を博物館に、その中で展開する諸活動を作品に見立てています。その中心が里山であり、代表格の川西市黒川の里山林では今も伝統的な炭焼きが行われています。また、三田市の県立有馬富士公園は里山公園の典型で、ここに新宮先生にも参画いただきました。

高曽根

「風のミュージアム」は、どのような思いから生まれたのですか。

新宮

僕は作りたいものが浮かぶと後先構わず作ってしまうので、行き場のない作品たちをずっと心配していました。そんな時に公園の一角を目にして、恋に落ちました。作品たちがうれしそうに動く様が目に浮かび、ここに展示できればと提案させていただいたわけです。本当にいい場所になってきたと喜んでいます。

のぼり 里山風車

高曽根

阪神・淡路大震災からの復興時には、芸術文化が人々の心の支えになりました。

井戸

被災した人々が心から立ち上がろうという気持ちがなければ復興は成し遂げられません。その内なる気持ちを引き出してくれたのが、芸術文化の力です。

高曽根

東日本大震災後、新宮さんは「元気のぼりプロジェクト」を立ち上げ、子どもたちが絵を描いたこいのぼりで被災地を元気づけました。

新宮

こいのぼりは日本人の心の元気のシンボルであり、そのビジュアルには人を元気にする力があると思うのです。送った先では、その土地の風で翻る。それによってメッセージを目で見て感じてもらえるだろうと。

井戸

なるほど。

風のミュージアム

新宮

その意味で、元気のぼりは究極の風のアートだと思います。現在、プロジェクトに賛同して世界中から届けられています。また、今は新たに「地球アトリエ」というものに取り組もうとしているところです。

高曽根

どのようなものですか。

新宮

美術館や音楽会場とは違う、普通の人がアートを身近に感じられるような場所です。からくり劇場を中心にした、お祭りのような活気のある所にしたいと思っています。

井戸

県も、ぜひ応援をしなければいけないですね。

新宮

世界中から「あんなユニークな所は他にない」と人が集まる一方、地元の人も親しめるものにしなければと考えています。

対談

県政150年 活力の源に

高曽根

新しい年への抱負を聞かせてください。

新宮

今年は文化的な交流を進めていきたいです。そして、兵庫県が歩みたい道へ、お手伝いできることがあればぜひ一緒にやらせていただきたいと思います。

井戸

今年7月12日に兵庫県は誕生150周年を迎えます。この節目を兵庫の活力を持続させるためのスタートにしたいですね。来年3月までの期間中、県民の皆さんに「一緒に多彩な事業を展開しましょう」と呼び掛けているので、ぜひ積極的に参加してもらいたいです。

対談の様子は1日正午~午後1時にサンテレビで放映予定
後日県ホームページでも番組を公開 「兵庫県 知事対談」検索

新宮晋氏

しんぐう・すすむ
1937年、大阪府生まれ。東京芸術大学絵画科を卒業後、イタリア政府奨学生としてローマへ留学。6年間の滞在中に平面から立体へ、さらに動く造形へと移行し、以来、風や水で動く彫刻を世界各地に作り続けている。2002年に紫綬褒章、10年に旭日小綬章を受章。14年には県立有馬富士公園に彫刻12点が常設された「新宮 晋 風のミュージアム」がオープンした。