ひょうごから世界へはばたくアートのちから

2019年の幕開けに当たり、日本の現代演劇をリードしてきた劇作家で
城崎国際アートセンター芸術監督の平田オリザさんを兵庫県公館に迎え、
県が豊岡市を拠点に展開しようとしている「国際観光芸術専門職大学(仮称、設置構想中)」
をはじめとする芸術・観光関連の取り組みなどについて、井戸敏三知事が語り合った。

平田オリザ氏

知事

平田さんは兵庫県と深いつながりがあるそうですね。

平田

祖父の代まで赤穂で薬問屋をやっていて、市内には今も親戚がいます。

知事

県との関係は、城崎国際アートセンターの芸術監督に就任されてからですよね。ここはもともと、城崎大会議館という県の施設でした。豊岡市に所管を替え、アーティストがまちに暮らすように滞在しながら制作活動をするアーティスト・イン・レジデンスの拠点になって以降、申し込みが殺到しているそうですね。

平田

はい。来年度分も20カ国68団体から申し込みが来て、その中から19団体に使っていただきます。施設を利用したアーティストの口コミにより、豊岡、城崎、あるいは但馬という名が世界中のダンスや演劇のカンパニーに広がっているのです。

アーティストたちがまちに暮らすように滞在しながら制作活動をする拠点施設の城崎国際アートセンター

国際演劇祭をアジアのハブに

知事

世界中に伝わるとは、口コミの影響力はすごいですね。また、豊岡で大きな国際演劇祭を企画していただいているとも聞いています。

平田

はい。世界最大の演劇祭はフランスのアヴィニョン演劇祭で、20ほどの正式招待演目以外に、自由参加の劇団によって1カ月に約千もの演目が市内の教会や納屋などで朝から晩まで公演されます。評判になると世界中のプロデューサーとの商談が始まって、翌年はヨーロッパ各地の演劇祭に呼ばれていくというビジネスの循環があります。そのような見本市的なフェスティバルがアジアにはまだ一つもないので、豊岡での国際演劇祭をそうしたアジアのハブにしたいと思っています。

知事

楽しみですね。

井戸敏三氏

平田

今年の9月からプレを始め、徐々に規模を拡大していく予定です。豊岡市内には空き店舗が多いので、期間中に借り上げてイベントスペースにすることによって地域の活力を引き出すフェスティバルにできればと考えています。

知事

地域創生戦略としても、芸術文化の力を生かした地域おこしは最も地域に根付きやすいので、大いに期待しています。平田さんは豊岡に引っ越していただけるとも聞いているのですが、本当でしょうか。

平田

はい。既に土地もほぼ決まり、今年の8月くらいをめどにしています。

知事

主宰されている演劇グループの青年団はどうなるのでしょう。

平田

日本で初めてのケースかと思うのですが、劇団ごと移転してきます。団員も10から20家族はこちらへ移住し、残りのメンバーは東京で活動を続けながらけいこや本番の時だけ来るかたちになります。

知事

これは楽しみだな。地域が随分活性化しますね。

ロボットを使った、英語でのコミュニケーション授業の様子 ロボットを使った、英語でのコミュニケーション授業の様子

1学年1学級などで特に期待

知事

これからの時代を考えると、人と人とのつながりは非常に重要で、コミュニケーション手法を使いこなせなければ通用しないと思います。平田さんはそのための教育を既に豊岡市内で実践されていますね。

平田

昨年度から市内全38の小中学校で演劇を使ったコミュニケーション教育を実施しています。3年前の最初は私がモデル校で授業をし、教員研修の講師も務めましたが、今では先生方が全て行っています。

知事

演劇を取り入れることで、どのような力が培われるのでしょうか。

平田

異なる価値観を持った人を理解していく多様性や、協働性ですね。例えば、城崎では小中学校が全て1学年1クラスという状況です。他者との出会いが少ないので、演劇的な要素でそれを補ってコミュニケーション能力を付けてもらおうというわけです。

知事

クラスの中で序列が決まってしまうとなかなか崩れないので本当はシャッフルできるような規模がほしいところですが、1学年1クラスという学校も増えています。そういう所にこそコミュニケーション教育が必要ですね。

対談

深い教養備える人材育成

知事

豊岡市内に但馬らしい世界に通用する観光と芸術を中心とした「国際観光芸術専門職大学(仮称)」の2年後の開校を目指しており、平田さんには学長になっていただく予定です。

平田

はい。

知事

専門職大学は55年ぶりに創設された国の新制度で、一般大学とは違って、いろいろな分野の専門家の養成を目的としています。ただ、専門学校とよく誤解されます。

平田

手に職を付けるのが専門学校。一方、専門職大学は「頭に職を付ける」と私たちは考えています。深い教養を持った人材を育てていくことを目指しています。

4年制開校は地域の悲願

知事

カリキュラムにはどのような特色がありますか。

平田

観光もアートもこれからは語学力が必須なので、3年次に全員に留学をしてもらうなど、語学教育に力を入れます。また、最大の特徴はクオーター制です。

知事

4学期制ということですね。

平田

そうです。夏休みと冬休みに当たる期間には、インターンシップや短期留学のほか、超一流の先生を招いた集中講義で学問の本質を学びます。インターンでは国際演劇祭にスタッフとして入ります。運営を経験すれば相当の知識と実践の両方が身に付きますし、学んだ英語も生かせます。

知事

但馬に4年制大学ができることは地域の人たちの悲願で、期待が集まっています。

平田

大学教員が高校で授業を行う高大接続が但馬でもできるようになるなど、幼稚園、保育所から高校まで、地域の学びの形が変わっていきます。今年は認可申請の年なので、理想の大学づくりに向けてしっかりと準備を進めていきます。

知事

どうぞよろしくお願いします。

ひらた・おりざさん

ひらた・おりざ
1962年東京生まれ。国際基督教大学に在学中の83年、劇団「青年団」を旗揚げ。戯曲と演出を担当し、95年には代表作「東京ノート」で第39回岸田國士戯曲賞を受賞。近年は国際共同製作作品を多数上演しており、2011年にはフランスの芸術文化勲章シュヴァリエを受勲。15年からは豊岡市にある城崎国際アートセンターの芸術監督を務めている。