公演スケジュール

WAVE 2009 Winter №53

「ウェーブ」とは松方ホール友の会が季刊で発行しているニュースのことで、神戸新聞文化財団主催の公演案内や関連情報を掲載しています。
主な掲載情報をご紹介します。



  • 4月に「柳家小三治独演会」
  • ふるさとで弾くピアノ その3 青柳いづみこ








  • 4月に「柳家小三治独演会」
    関西初企画、早くも完売

                     
    変幻自在 緻密さとおおらかさ

    落語界の大御所・柳家小三治の関西初の独演会が2010年4月10日、神戸新聞松方ホールで開かれます。2009年9月の前売券発売と同時に申し込みが相次ぎ、早くも完売となりました。神戸新聞の演芸批評記事でも知られる神戸在住のメディアプロデューサー・大阪芸術大学客員教授の村上健治さんに、独演会に寄せる期待を書いていただきました。

    「弟子に何も教えることはない。唯一してやれることは、自分の背中を見せてやることだ」
    「師匠にそっくりの芸だといわれて喜ぶ奴は、大ばかだ」
    落語界の最高峰を走り続ける一人、柳家小三治師匠の言葉です。3年半にわたる丁寧な記録、ドキュメンタリー映画「小三治」(監督・康宇政)。「人間・小三治」の生き方と芸との格闘がシーン、シーンに刻まれています。2009年初めに公開開始のこの映画、神戸では同年7月、新開地の神戸アートビレッジセンターで上映され、多くの人々に感銘を与えました。

    神戸の落語ファンが心待ちにする「東西落語名人選」(神戸文化ホール)。今秋も東の名人の一人として来演した小三治師匠は、「千早振る」(昼の部)と「禁酒番屋」(夜の部)を軽妙に語って、客席を魅了しました。
    この会で聴いた私の好きな噺は、おかしいのに哀しさがじわりとこみ上げてくる「鰻の幇間」(2001年)、奇談なのに艶めかしい「野ざらし」(2004年)、それに「青葉の笛」(2007年)の三席です。
    小三治師匠は、枕の名手として知られています。枕は本題に入る前の、“落語界導入剤”。折々の世相と感慨で織り成す枕は、「ま・く・ら」という本にまとめられ、2冊も出版されています。 さて、2007年に取り上げられた「青葉の笛」とは、小三治師匠が歌曲のリサイタルで歌った小学唱歌のタイトル。一の谷の戦場で、源平敵味方なく笛の音に心通わす武士のピュアな魂を謳っています。この年の公演で小三治師匠は、この歌に寄せる思いを熱く語ったうえ、高座に正座してアカペラで歌いあげました。昼の部終了後、休憩時間に須磨の古戦場跡を訪ねて往時を偲び、夜の部で続きをリポートしています。
     後で、楽屋でうかがいました。
    ―「青葉の笛」は新作の噺ですか。
    「最初は、枕のつもりで話し始めたんだけど、途中でやめられなくなったんだ」
    ―で、何の噺の枕のつもりだったのですか。
    「わすれちゃった」
    変幻自在、緻密さと、このおおらかさ、「小三治落語」の真骨頂です。

    4月10日、関西で初めて実現する「柳家小三治独演会」では、全部が「小三治ワールド」です。楽しみです。師匠からのメッセージを預かってきました。お届けいたします。
    「関西は私のフィールドじゃないと、ずっと思っていた。神戸の皆様から独演会の声をかけていただいて、内心うれしいです。私自身、私はこうやるから観てくれというタイプじゃない。お客さんとその日に会場で会って、どんな空気を作れるか、楽しみにしています。よろしく!」
    (写真=ドキュメンタリー映画「小三治」の一場面)

    村上健治[メディアプロデューサー・大阪芸術大学客員教授]


    ふるさとで弾くピアノ その3  青柳いづみこ(ピアニスト・文筆家)

    「卒業記念コンサート」
                     
    芸大を卒業した年の春休み、フルートと声楽の同級生を誘って豊岡の市民会館で自主コンサートを開いたことがある。  今考えればずいぶん無謀な企てよと思うが、文化ホールは1100席。無名の芸大生が埋めるのはまず不可能なキャパだ。しかも、スケジュールの関係で、コンサートまでの準備期間は1ヶ月ほどしかなかった。  曲目は、それぞれ卒業試験で弾いたり歌ったりした曲目を中心に、フルート奏者はモーツァルトの協奏曲、ソプラノ歌手は歌劇のアリアをいくつかと日本歌曲、私は彼女たちの伴奏をするとともに、ソロではショパンの『練習曲集作品25』全曲を用意した。これまた、ピアノのレパートリーの中でも最難曲とされる作品を弾いて、さらに器楽や歌の伴奏をするなどもってのほかなのだが、こわいもの知らずだったのだろう。  マネジメントの事務所もないから、入場料は自分で決める。誰かが、100円以下だと税金がかからないから99円にしては? と提案してくれたので、そのとおりにした。  予算がないからチラシやポスターを印刷することもできない。一枚一枚手描きでつくり、音楽関係者や学校関係者のもとに陳情にまわった。  労音や合唱関係者が同情して、途中から助けてくれるようになった。  祖母の家がある宿南村の方々も、自転車で個別訪問に協力してくださった。  コンサート前日には他の出演者たちも到着し、3人で近くの城崎温泉に泊まった。寝る前にマッサージさんを頼んだソプラノ歌手から、こう言われた。明日の朝起きたら、私は何をきかれても一切しゃべらなくなっているからびっくりしないでね…。  喉をいたわるためらしい。あらためて歌い手は体が資本なんだなぁと痛感した。  いくら支援者が増えたといっても、集客には限りがある。本番の客席は1割も埋まっていただろうか。しかし、熱演につぐ熱演で大いに盛り上がった。私も一生懸命演奏した。  打ち上げのとき、地元のスタッフは口々に、マイクを通さなくてもすみずみまで声の通るソプラノ歌手を賛美していた。とくに「この道は」や「からたちの花」など日本歌曲は親しみやすく、感動を呼んだようだ。  器楽奏者はどうあがいても声楽家には太刀打ちできない。そんな教訓を得たふるさとでの初コンサートだった。(写真=終演後、花束を受け取る筆者=豊岡市民会館)

    青柳いづみこ プロフィール
    ピアニスト・文筆家。CDに『ドビュッシーの時間』『天使のピアノ』(いずれもカメラータ)。著書『翼のはえた指』(白水社)で吉田秀和賞、『青柳瑞穂の生涯』(平凡社ライブラリー)で日本エッセイストクラブ賞。2009年刊の『6本指のゴルトベルク』(岩波書店)にて講談社エッセイ賞。近著に『指先から感じるドビュッシー』(春秋社)。大阪音楽大学教授、青山学院大学講師。日本ショパン協会理事。オフィシャルHP: http://ondine-i.net
     

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