公演スケジュール

WAVE 2010 Spring №54

「ウェーブ」とは松方ホール友の会が季刊で発行しているニュースのことで、神戸新聞文化財団主催の公演案内や関連情報を掲載しています。
主な掲載情報をご紹介します。



  • ヴァイオリニスト Specialite
  • ふるさとで弾くピアノ その4 青柳いづみこ








  • ヴァイオリニスト Specialite
    戸田弥生 & 渡辺玲子

                     

    出演者2人に、今回の公演に向けたコメントをいただきました。質問内容は次の3つです。
    ①2人のヴァイオリニストが同じ日に同じホールで、自らが弾きたい曲を弾くという企画への意欲は?
    ②選曲の意図は?
    ③神戸(松方ホール)に対する印象は?




    戸田弥生
    ①聴衆の方にとっては多分、とても興味深い企画なのでは、と思います。ただ、演奏する方は自分の音楽に集中しなくてはいけませんので、1人でつくるリサイタルと、今回のような他の演奏家の方とご一緒するコンサートも、あまり大きな違いは感じません。

    ②演奏したい曲目を弾かせていただけるとのことで長年、挑戦したいと考えていたショスタコーヴィチのヴァイオリン・ソナタをメーンに、音の宝石箱のようなシューベルトとブラームス、そして今秋新しく出させていただくCDの中の1曲、プロコフィエフの無伴奏ヴァイオリン・ソナタをプログラムにいたしました。

    ③神戸には今まで何回か訪れたことがありますが、とても落ち着いた、異国情緒あふれる素敵なところですね…。 なぜか私には 、とても落ち着ける大好きな町です。松方ホールさんは今回で2回目ですが、非常にあたたかな響きの、素晴らしいホールだと思います。久しぶりに演奏させていただけますことを、心から楽しみにしております。



    渡辺玲子
    ①このような企画に参加させていただくのは、初めての経験です。聴いてくださる皆さんには、ヴァイオリンという楽器の味わい方について、この試みを通して何か新しい視点を見つけることができるとよいと思います。演奏する側にとっては、自身の表現に集中するということでは、一人で完結する形のコンサートと(肉体的にも精神的にも)全く変わりがないと感じます。ただ、両方のコンサートを通して聴かれる方々のために、戸田さんの選ばれたプログラムとのバランスを考慮して演奏曲を選ぶことと、私がイメージする自分の音楽的個性が良く発揮でき、共感していただきやすいプログラムにしようと努めました。

    ②ベートーヴェンの作品には、私はここ数年強く共感を覚え、頻繁に演奏会で取り上げるようになりました。この第10番のソナタは、他の9曲のヴァイオリン・ソナタとはかなり趣が異なっており、彼の成熟した穏やかな内面が感じられる美しい作品です。また、ヤナーチェクのソナタは、コンパクトな構造ながら人間の内奥の感情の襞(ひだ)を深く表現しており、最近気に入って演奏している曲の一つです。

    ③松方ホールについては、その高い評判は聞いていますが、今回が初めての出演となります。とても楽しみにしています。



    ふるさとで弾くピアノ その4  青柳いづみこ(ピアニスト・文筆家)

    「すべりこみセーフのコンサート」 
                     
    2009年の5月、養父市八鹿町の宿南小学校でコンサートを開いた。  当初は、前年に亡くなった母の追悼として、かやぶき屋根の家にピアノを運び、お世話になった方々をお招きして聴いていただこうと思っていた。  しかし、かやぶき屋根のコンサートを開いていたころと違い、家も県の文化財に指定されている。ピアノがかなり重い上に、たくさんのお客さまではとても床が支えきれないだろうと、なかなかむずかしいという結論になった。  それでは、近くの小学校のミーティングルームを貸していただこうと交渉していたら、校長先生から、是非わが校の児童や幼稚園の子どもたちにもきかせたいというお話が出て、急遽体育館で開催することになった。  それも、学校の行事だから午前中。ずいぶん違う話である。  母をしのんでしっとりした曲を弾こうと思っていたのだが、子どもたちからのリクエストで『崖の上のポニョ』と『トトロ』から「さんぽ」を弾き、いっしょに合唱することになった。『小犬のワルツ』もある。少しは本格的な曲を、と思って、自分が小学校五年生のころに練習していたシューベルトの『即興曲』も入れた。母をしのぶ曲としてはドビュッシーの『月の光』。  当日はしとしと雨がふって、五月なのに寒い日である。ピアノの鍵盤が冷えきっているので、ストーブを置いていただいた。子どもたちは床の上に並んで座り、付き添いの父兄や宿南地区のお年寄りもうしろのほうに座ってくださった。  みると、皆さんマスクをしている。  「ん?」  なんと、その朝八鹿高校の生徒に新型インフルエンザの患者さんが出たので、マスク着用が義務づけられているとのこと。私は、マスクをしてピアノを弾くわけにもいかないし、トークもあるので免除していただいた。  子どもたちも、『ポニョ』や『トトロ』を歌うときだけはマスクをはずし、元気に歌ってくれた。大きな口をあけ、リズム感もよく、音程もしっかりしていたし、何よりよく声が出ているので感心してしまった。最後にしっとり『月の光』でしめくくり、控室に戻ってきたところで、ニュースが飛び込んできた。新型インフルエンザで一週間休校、その日の午後からすべての行事は中止。  すべりこみセーフで演奏したふるさとのコンサートは、忘れられない思い出になった。 (「ふるさとで弾くピアノ」は今回で終了します) (写真=児童から花束を受け取る筆者)

    青柳いづみこ プロフィール
    ピアニスト・文筆家。CDに『ドビュッシーの時間』『天使のピアノ』(いずれもカメラータ)。著書『翼のはえた指』(白水社)で吉田秀和賞、『青柳瑞穂の生涯』(平凡社ライブラリー)で日本エッセイストクラブ賞。2009年刊の『6本指のゴルトベルク』(岩波書店)にて講談社エッセイ賞。近著に『指先から感じるドビュッシー』(春秋社)。大阪音楽大学教授、青山学院大学講師。日本ショパン協会理事。オフィシャルHP: http://ondine-i.net
     

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