
ネット証券で1位と2位の人気を誇る楽天証券とSBI証券。どちらか1つの口座を開設して利用する方法ももちろん有効ですが、両方の口座を開設し、それぞれのメリットを有効に活用しながら資産を形成していく考え方もあります。
楽天証券、そしてSBI証券には、投資商品におけるそれぞれの強みがありますので、自分の投資スタイルに合わせて使い分けることで、より効率的に利用できるでしょう。
今回は投資商品別に楽天証券とSBI証券の特徴を比較し、使い分けのコツについて解説します。
新井智美さんの総括!
楽天証券とSBI証券を使い分けるには、つみたてNISAや投資信託では、両社にそこまでの違いはないので、投資信託購入の際のポイントサービスをどこまで有効に使えるかで判断することがポイントです。普段、楽天経済圏の利用が多く、楽天ポイントの保有が多いなら、楽天証券を利用する方がメリットがありますし、メインで利用しているクレジットカードが三井住友カードなら、SBI証券を利用するべきです。
また、アプリの利用のしやすさにおいては、国内株式は楽天証券での購入がおすすめです。米国株はSBI証券の方が格段に取り扱い銘柄数が多いため、SBI証券で購入するとよいでしょう。
SBI証券に向いているのは、iDeCoの口座開設、そしてIPOの利用です。SBI証券なら、iDeCoの運用を低コストで行えますし、IPOについては、取り扱い実績が多く、かつ独自の抽選方法を取り入れているため、抽選に当たる可能性が高くなります。
証券会社にはそれぞれ独自のサービスがあります。証券口座は複数所有しても問題ありませんので、楽天証券とSBI証券など評価の高い証券会社の口座を保有し、取り引きの用途によって上手に使い分けることで、より効率的な資産形成につなげていきましょう。

この記事を書いた人
新井智美さん
2006年11月 卓越した専門性が求められる世界共通水準のFP資格であるCFP認定を受けると同時に、国家資格であるファイナンシャル・プランニング技能士1級を取得。2017年10月 独立。主に個人を相手にお金に関する相談及び提案設計業務を行う
トータルマネーコンサルタント
楽天証券とSBI証券を使い分けるコツ
楽天証券の一番の特徴は、ポイントを有効活用できる点です。それに対し、SBI証券は取り扱い商品や銘柄が多い点が大きな特徴です。また、取引手数料が安く設定されている点もメリットといえるでしょう。
ただ、楽天証券には用意されているサービスがSBI証券にはなかったり、またその逆もあり得ますので、それぞれのサービスの特徴をしっかりと理解しておくことが大切です。
- 国内株式
- 米国株式
- つみたてNISA
- 投資信託
- iDeCo
- IPO
国内株式で楽天証券とSBI証券を使い分けるコツ
楽天証券はスマホアプリの見やすさに定評があります。楽天証券が提供する「iSPEED」では、国内および海外株式両方に対応しているため、より多くの銘柄の情報を閲覧でき、注文や資産管理を行えます。
それに対し、SBI証券は国内株式と海外株式のアプリが別になっているため、確認の際には別々のアプリを立ち上げる必要があり、面倒に感じる人もいるでしょう。特に国内株式取引で慣れてきたら、海外株式取引を行いたい気持ちになる人も多いことが予想され、その際に、チャートなどが見やすく、操作がしやすいアプリが用意されている楽天証券で取り引きを開始しておくと、海外株式の取り引きを始める際にも比較的楽に始められます。
米国株で楽天証券とSBI証券を使い分けるコツ
米国株は楽天証券そしてSBI証券のどちらでも取り引き可能ですが、外国株式という視点で考えると、SBI証券の方が取り扱い国が多いという特徴があります。
楽天証券での外国株の取扱国数は6か国であるのに対し、SBI証券は9か国です。SBI証券で取り扱っており、楽天証券で取り扱っていない外国株式は「韓国株」、「ロシア株」そして「ベトナム株」です。もし、この3つのいずれかの株式取引を行いたいなら、SBI証券で行いましょう。
また、SBI証券では、米国株について「定期買い付け」や「貸株」、「逆指値注文」などのサービスを行っており、米国株の取り引きだけでみても、使いやすいといえます。
つみたてNISAで楽天証券とSBI証券を使い分けるコツ
つみたてNISAの取り扱い銘柄数は、楽天証券そしてSBI証券でもそこまでの差はありません。そのため、どちらでつみたてNISAも口座を開設しても問題はないといえます。
つみたてNISAやNISAの口座は1人1口座しか開設できませんので、使いやすい方を選んで利用することをおすすめします。
また、2024年からは新しいつみたてNISAや新NISAの制度が始まります。特にNISAの制度は変更点が多いため、どのように変わるのか、自分でも事前にしっかりと理解しておきましょう。
新しいNISAとは
より多くの方々に長期・積立・分散投資を始めるきっかけとしてもらうため、2024年以降、一般NISAの非課税対象および非課税投資枠が見直され、2階建ての新しいNISAに変わります。・1階部分で購入できる金額(非課税投資枠)は年間20万円まで、2階部分で購入できる金額(非課税投資枠)は年間102万円までです。
引用:金融庁|新しいNISA制度
投資信託で楽天証券とSBI証券を使い分けるコツ
投資信託の取り扱い銘柄数はSBI証券の方が若干多くなっていますが、つみたてNISAと同様、そこまでの差はありません。ただし、SBI証券では銘柄をより素早く探せる「投信スーパーサーチ」が用意されており、気になる銘柄をすぐに探しだせます。
また、SBI証券の投信積立は100円から行うことができ、買い付けの頻度も「毎日」、「毎月」以外に「毎週」買い付けることができ、より購入のタイミングを分散する選択の幅が広がる点もメリットです。
投資信託の買い付けにポイントが使えるほか、月間の投資信託の平均保有金額に応じて投信マイレージがたまり、銘柄によっては最大0.25%の付与率となるなど、ポイントを貯めやすい仕組みになっています。
楽天証券の投資信託に関して詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
iDeCoで楽天証券とSBI証券を使い分けるコツ
iDeCoを行うなら、SBI証券がおすすめです。現在ではセレクトプランのみの申し込みとなっていますが、SBI証券は37本、楽天証券は32本と、SBI証券の方が銘柄数も多く、投資信託で人気のある「eMAXIS Slim」の銘柄も、SBI証券のiDeCoで購入できます。
ただ、今後SBI証券で取り扱う銘柄数については35本に減少する予定となっており、元本確保型商品のなかから3本が除外される見込みです。そうなると元本確保型の商品が1本のみとなってしまうため、元本確保型の商品でリスク分散を考えている人にとってはSBI証券を選ぶ魅力が薄くなってしまうかもしれません。ちなみに楽天証券でも、元本確保型の商品は1本のみ用意されています。
\iDeCoを始めるならSBI証券がおすすめ!/
IPOで楽天証券とSBI証券を使い分けるコツ
IPOの引き受け実績はSBI証券の方が多いです。また、SBI証券と楽天証券では抽選方法に違いがあります。
SBI証券は抽選においてポイントプログラムを導入しており、抽選に外れたとしても「IPOチャレンジポイント」がたまる仕組みになっています。そして、ポイントを利用して応募することで、当選しやすくなるというメリットがあります。配分としては、抽選が60%、IPOのチャレンジポイントが30%、そして独自基準での配分が10%です。
それに対して、楽天証券は完全な「平等抽選方法」を採用しているため、SBI証券に比べるとどうしても当選する確率が低くなってしまうのです。
ただ、人によっては完全に平等な方法で抽選してもらいたいと考える人もいるでしょう。そのため、IPOについては楽天証券とSBI証券の両方を活用する考え方もいいかもしれません。
\SBI証券はIPOに強い!/
楽天証券とSBI証券で共通しているポイント
ここまで、楽天証券とSBI証券をさまざまな商品の観点から比較してきましたが、楽天証券とSBI証券で共通している点もあります。それはどのようなものなのでしょうか。
国内株式・投資信託・つみたてNISAの取り扱い銘柄数
国内株式や投資信託、そしてつみたてNISAの取り扱い銘柄数は楽天証券とSBI証券でほぼ差はありませんし、1位と2位を争っている状況です。また、3位とはかなりの差をつけていることから、取扱い銘柄数の多さから選ぶなら、楽天証券もしくはSBI証券を選ぶ人が多いのではないでしょうか。
ただし、上でも少し述べたように、外国株式の取り扱い国数はSBI証券の方が多くなっていますので、外国株式の取り引きを視野に入れている人は、楽天証券とSBI証券が取り扱う国の詳細をチェックして、最終的に決めるようにしましょう。
国内株式・投資信託・つみたてNISAの手数料水準
国内株式の手数料は、SBI証券(スタンダードプラン)と楽天証券(超割コース)のどちらも差がありません。ちなみに手数料水準は以下のとおりです。
国内株式売買委託手数料(約定) | ||
---|---|---|
![]() |
![]() |
|
超割コース | スタンダードプラン | |
5万円まで | 55円 | 55円 |
10万円まで | 99円 | 99円 |
20万円まで | 115円 | 115円 |
50万円まで | 275円 | 275円 |
100万円まで | 535円 | 535円 |
150万円まで | 640円 | 640円 |
3,000万円まで | 1,015円 | 1,015円 |
3,000万円超 | 1,070円 | 1,070円 |
上記全て税込価格。SBI証券のアクティブプランは25歳以下の場合、手数料実質0円プログラムあり。
ただ、1日の約定代金合計額が100万円を超える場合は、SBI証券(アクティブプラン)の方が手数料を安く抑えることができます。
投資信託については、どちらも購入手数料は無料となっており、運用する商品の信託報酬や信託財産留保額が最終的なコストの判断になるでしょう。さらに、つみたてNISAに関しては、楽天証券、SBI証券ともに取引に関する手数料は無料です。
楽天証券とSBI証券との違い・比較ポイント
楽天証券とSBI証券には共通している部分もあれば、異なる部分もあります。ここからは異なる部分の詳細について解説します。
ポイント投資・サービス
■楽天証券とSBI証券のポイント投資・サービス比較表
楽天証券 | SBI証券 | |
---|---|---|
貯まるポイント | 楽天ポイント | Tポイント、Ponta、dポイント、Vポイント |
投信残高に対するポイント付与 | あり 毎月末時点の投資信託の保有残高が、はじめて基準残高に到達した場合に、10~500ポイント | あり 投資信託の月間の平均保有金額の0.2~0.25% |
交換先の種類 | 投資信託・株の購入、提携のお店 | 投資信託の購入、提携のお店、電子マネーチャージ |
楽天証券とSBI証券は、いずれもポイント投資が可能です。ただ、ポイントサービスという面で見ると、ハッピープログラムや楽天キャッシュ積立でもポイント優遇を受けられる楽天証券の方が評価は高いといえるでしょう。
楽天証券では、楽天銀行と提携してより効率的にポイントがためられるハッピープログラムが用意されているほか、投信積立では楽天カードから楽天キャッシュにチャージすることでポイントバックができたり、楽天カードで決済することでポイントバックが受けられるようになっています。さらに、楽天ポイントを利用して投資することもできますし、楽天ポイントコースとマネーブリッジを設定し、月間合計3万円以上のポイント投資を行うことで、楽天市場の利用でもらえるポイントが+0.5倍になります。
\楽天証券ポイントが貯まる!使える!/
外国株の取り扱い銘柄数
外国株の取り扱い銘柄数は、SBI証券の方が取り扱う国の数が多いため、差がみられます。特にSBI証券の米国株の取り扱い銘柄数は6,000銘柄を超えており、今後も増えることが予想されています。もちろん、取り扱う国の数も楽天証券よりも3か国多く、総合的な外国株取り扱い銘柄数を比較すると、差がより大きくなるのではないでしょうか。
■楽天証券とSBI証券の外国株の取り扱い銘柄数比較表
楽天証券 | SBI証券 | |
---|---|---|
米国株 | 4,648銘柄 | 6,000銘柄超 |
中国株 | 1,294銘柄 | 1,325銘柄 |
タイ株 | 75銘柄 | 77銘柄 |
その他 | 3ヵ国 ・シンガポール ・インドネシア ・マレーシア | 6ヵ国 ・シンガポール ・インドネシア ・マレーシア ・ベトナム ・ロシア ・韓国 |
\SBI証券は外国株の取り扱いが豊富!/
金、銀、プラチナのサービス
■楽天証券とSBI証券の金、銀、プラチナのサービス比較表
楽天証券 | SBI証券 | |
---|---|---|
買付手数料 | 1.65% | 1.65% |
取引時間 | 9時~24時 (15時~17時15分を除く) | 8時30~翌5時 |
積立買付 | 可能 【金・プラチナ】 金額指定:1,000円~ 数量指定:1グラム~ 【銀】 金額指定:1,000円~ 数量指定:10グラム~ | 可能 金額指定:1,000円~ 数量指定:1グラム~ |
現物での引き出し | 可能(銀を除く) 【受取単位】 ・金:100グラム/500グラム/1,000グラム ・プラチナ:100グラム/500グラム | 可能 【受取単位】 ・金:1キロ ・プラチナ:1オンス ・銀:100オンス |
取引時間はSBI証券の方が長いこともあり、金や銀、プラチナのサービスについては、SBI証券の方が評価が高くなっています。
また、楽天証券およびSBI証券ともに一定量たまった金属を現物で引き出すことができますが、SBI証券は金、銀、プラチナのすべての現物引き出しに対応しているのに対し、楽天証券は銀の引き出しには対応していない点に注意が必要です。
\金、銀、プラチナ取引もSBI証券で!/
楽天証券のクレカ積立
■楽天証券とSBI証券のクレカ積立比較表
楽天証券 | SBI証券 | |
---|---|---|
積立設定可能額 | 毎月100~5万円 | 毎月100~5万円 |
決済に利用できるカード | 楽天カード | 三井住友カード |
貯まるポイント | 楽天ポイント | Vポイント |
ポイント還元率 | 1% (100円につき1ポイント) | カードの種類により0.5~2% |
対象口座 | ・特定口座 ・一般口座 ・一般NISA ・つみたてNISA | ・特定口座 ・一般口座 ・一般NISA ・つみたてNISA |
楽天証券のクレカ積立におけるポイント還元率は、カードの種類に関わらず1%です。SBI証券は決済に利用するカードによって還元率が異なっており、以下のとおりとなっています。
- 高島屋カード:0.1%~0.3%
- 三井住友カード:0.5%~2%
- 東急カード:0.25%~最大3%(2022年12月までキャンペーンを開催しており、最大4%となる)
銀行連携サービス
■楽天証券とSBI証券の銀行連携サービス比較表
楽天証券 | SBI証券 | |
---|---|---|
提携銀行 | 楽天銀行 | 住信SBIネット銀行 |
連携サービス名 | マネーブリッジ | SBIハイブリッド預金 |
優遇金利 | 普通預金金利が最大年0.1%にアップ | 普通預金金利が年0.01%にアップ |
提携銀行に連携することで、優遇金利が適用される点は非常に嬉しいものです。SBI証券の提携銀行は住信SBIネット銀行で、SBIハイブリッド預金に預けると金利が0.01%になります。
楽天証券は楽天銀行とマネーブリッジを設定することで、普通預金金利が最大0.1%までアップするため、実質SBI証券よりも10倍の金利です。
この点は楽天証券に軍配が上がるといえるでしょう。
\楽天銀行と連携すると普通金利が最大0.1%UP!/
まとめ
楽天証券そしてSBI証券は、両者とも独自のメリットがあり、利用する側にとっても取り引きの上で不便を感じることはほぼありません。しかし、細かく比較してみると、それぞれのメリットやデメリット、さらには取り引きを行う際に注意しておかなければならない点も存在します。
証券会社の口座は複数開設できるため、できるならば、楽天証券とSBI証券の口座を一緒に開設させておき、自分の投資目的に応じて使い分けることをおすすめします。そのためには、両社の違いや共通点をしっかりと把握し、さらに、自分が得たいメリットをはっきりさせておくことが大切です。