明石

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会場のテーブルで花を描く浜田登男さん=明石市
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会場のテーブルで花を描く浜田登男さん=明石市
浜田さんが「一番のお気に入り」と話すうな重の絵
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浜田さんが「一番のお気に入り」と話すうな重の絵

 13年前に脳出血で右半身が不自由になり、失語症の後遺症がある浜田登男さん(77)=兵庫県明石市=が左手で水彩画を描き続け、自宅2階で初の個展を開いている。妻の悦子さん(70)に支えられ、描いた絵は約1500枚。悦子さんは「絵を見て評価してもらうことで希望や充実感を持つことができる。その軌跡を知ってほしい」と話している。(吉本晃司)

 淡路市出身の浜田さんは高校卒業後、神戸銀行に入行。悦子さんと結婚後、「自分の店を持ちたい」と31歳で退社し、酒卸問屋で修業した。

 1978年、JR西明石駅から南東へ歩いて3分の場所に「浜田酒店」を開き、1人で経営の実務をこなした。37歳だった。

 悦子さんは「堅物で寡黙で厳しい性格。書類や領収証なども税務署員が驚くほどきっちりと管理していた」という。

 2004年冬、夕食中にいすから落ちて意識がなくなった。

 脳出血で20日間入院。利き腕の右手がまひし、右足も不自由に。言葉がうまく出てこない失語症にもなり、日常会話がやや不便になった。浜田酒店も閉じた。

   ◆

 翌年、県立総合リハビリテーションセンター(神戸市西区)で職員から勧められ、バナナを描いた。

 倒れる前は絵に全く興味がなかったが、鉛筆で線画のように描いた絵はバナナの房をほぼ忠実に再現し「すごい上手」と職員に褒められた。以降、スケッチブックに身近な野菜や果物を描くようになった。

 悦子さんの勧めで絵の題材は広がり、ユリやバラなどの花を水彩色鉛筆で描くようになると、色や濃淡も表現するようになった。

 最近は雑誌の写真などを基に仏像も描く。息子が営む接骨院に飾った仏像の絵は、患者が手を合わせて拝むという。

 13年でスケッチブックは61冊になった。今もほぼ毎日5時間ほど描いている。登男さんは1枚仕上げるごとに達成感を感じるという。ケアマネジャーに毎月批評してもらうことが次のエネルギーにもなっている。

 個展では、初めて描いたバナナや野菜、花、自宅の風景、仏像など約40枚を並べた。スケッチブックも全て置き、登男さんの絵の軌跡を見ることができる。

 期間中は、登男さんが部屋の中央のテーブルで花を描く。その様子を見てもらおうというアイデアだ。

 悦子さんは「話すことに不便はあるが、絵を描くことで心が落ち着くのか、お父さんの性格が穏やかになってきた」と話す。

 29日まで。会場は旧浜田酒店。午前10時~午後4時。無料。

■初の個展「夢」叶える、支えた妻の“翻訳力”

 登男さんは初個展に「夢」というタイトルを付けた。登男さんを長年支えるケアマネジャーは、増えていく作品を見ながら「いつか個展を開きたいね」と話し、数年前から喜寿での開催を目標にしていた。「夢」はかなった。

 退院後、すぐに始めたリハビリは14年目に入り、今も言語療法士や理学療法士、ケアマネジャーの支援を受ける。失語症でうまく話せなくなった日常会話は、悦子さんが以心伝心で代弁する。

 記者が質問すると、登男さんは「そりゃー、あー、えー」と笑顔で応えたあと、悦子さんの方を向いて助けを求める。悦子さんの“翻訳力”を信頼している証しだ。

 口数が少なく、堅物な性格だったという登男さん。細部まで観察し、繊細に色付けされた花や葉の作品を見たケアマネジャーは、「お父さんは実は、昔から優しかったのよ」と想像している。

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