明石

  • 印刷
大蔵市場の火元近くに放水する消防隊員=明石市大蔵中町
拡大
大蔵市場の火元近くに放水する消防隊員=明石市大蔵中町
現場指揮=明石市大蔵中町
拡大
現場指揮=明石市大蔵中町
市場の南側=明石市大蔵中町
拡大
市場の南側=明石市大蔵中町
鎮圧後の市場=明石市大蔵中町
拡大
鎮圧後の市場=明石市大蔵中町
神戸新聞NEXT
拡大
神戸新聞NEXT

 兵庫県明石市大蔵中町の大蔵市場火災は25日で発生から半年になる。古い木造住宅の密集地域。強風。相次ぐ119番通報。あの日、消防職員の脳裏をよぎったのは約1年前に大惨事となった新潟県の糸魚川大火だった。「これはあかん。同じ悲劇を繰り返すな」。なぜ大蔵市場火災では死傷者を出さず、延焼を最小限に食い止めることができたのか--。「そのとき」を再現する。(勝浦美香)

◆2017年10月25日

 風向き 北北東

 風速 毎秒5・8メートル

 最大風速 同9・8メートル

 15・46 明石市消防本部に最初の119番が入る。「市場の窓から火が噴いている」

 火元の南隣の部屋にいた古野英武さん(73)は窓の外を見た。ふわふわと漂っていた灰色の煙が黒色に変わる。慌てて階段を駆け下りた。近所の人が家庭用ホースで市場めがけて放水していた。

 通報は瞬く間に25件。5台の回線がふさがった。

 15・49 市消防本部の窓から黒煙が見えた。情報司令課の三木一弘主幹は「すぐに糸魚川大火のイメージが頭をよぎった。ああなってはいけない」

 15・50 最寄りの中崎分署隊が現場到着。市場内の住民は11世帯23人。「全員が避難した」と地域住民が伝える。店舗は33軒。大半が空き店舗だが、営業していた2軒の客に逃げ遅れがいるかもしれない。

 北側通路から隊員が突入した。シャッターをたたいて避難を呼びかける。煙と熱気が充満している。危険を感じて退避した直後、パン、パン、と爆発音が鳴り、通路の天井が崩れ落ちた。

 16・03 第3出動発令。市消防本部の全部隊を投入。今回のようなケースは、火元の「包囲」と「延焼阻止」を同時に行うのが基本だが、現場に着いた市消防署の長谷川健署長は決断した。

 「北風が強い。南に回れ!」。周辺民家の延焼阻止を最優先するため、市場の西と南に「延焼阻止最終ライン」を設定し、部隊を集中させた。「何が何でもここで食い止めろ」

 16・17 隣接市との協定に基づき、神戸市と加古川市に応援要請。

 16・24 「要救助者なし」を確認。

 16・41 県の協定に基づき、三木、高砂、小野市などに応援要請。応援隊が続々と集結する。

 三田市の仕事先から駆け付けた消防団大蔵班班長の石川紀彦さん(39)は火の海に放水した。市場には母が営んでいたお好み焼き店がある。「掛けても、掛けても…。火が大きすぎる」

 16・59 中崎小学校に避難所開設。近くのグループホームの16人が避難。

 17・35 大蔵会館の避難者を中崎小に誘導。会館前で立ち尽くしていた住民らは「なんで炎に放水せんのや」。

 19・08 市場から約40メートル南の空き家で「飛び火」を確認、炎上。「なぜ離れた場所から」。住民に不安が広がる。

 延焼を拡大させるのは、炎が風に乗って飛ぶ「飛び火」だ。市場の南西方面ですでに警戒していた隊員らが、周辺民家の屋根や壁にも放水を始めた。

 20・00ごろ 市場は焼け落ちたが、火勢が弱まる。

 22・12 鎮圧

◆10月26日

 3・30 部隊交代

 6・43 鎮火

 約15時間続いた火災で、近隣の民家9軒が延焼した。4軒が全焼。5軒は外壁がこげた程度だった。市消防が最も恐れた「飛び火」は、市場の南約100メートルの地点でも確認された。

 市場内の自宅が全焼した古野さんは「50年以上の歴史が終わってしまった。炎への放水が少ないことに疑問も感じたが、延焼阻止の努力を知り、今は納得している」と話す。

 長谷川署長は「延焼を完全に防げなかった悔しさは残る」とした上で、「一つ間違えば明石でも糸魚川大火のようになっていた。被害を抑えられたのは、偶然でも幸運でもなく、住民の日ごろの深いつながりと素早い対応があったからだ」と話す。

   ◇   ◇   ◇

■市営住宅への避難者、5月末に転居完了の見通し

 大蔵市場火災では、3カ所の市営住宅に最大9世帯が避難したが、5月末までに全員の転居が完了する見通しだ。

 市は火災の翌日から、全焼などで避難が必要な世帯に西朝霧丘、北王子、西新町の市営住宅を無償提供。年金暮らしの高齢者が多く、場所や転居後の家賃負担などで移転が長引いていた。

 一方、がれき撤去は4月上旬に本格化。市は国や県とともに、空き家撤去などが目的の助成制度を特例として活用した。がれき撤去は5月上旬に完了する見通し。(藤井伸哉)

【糸魚川大火】2016年12月、新潟県糸魚川市の中心部で発生した大規模火災。約30時間燃え続けた。木造住宅の密集地、最大瞬間風速27・2メートルの強風という悪条件が重なり、焼失面積は約4万平方メートルに及んだ。死者はいなかったが、消防団員を含む計17人が負傷した。強風による「飛び火」で延焼が拡大し、約200メートル先まで火の粉が飛んでいた。

【大蔵市場】1959年ごろ完成。最盛期は約30店舗が営業した。東西約19メートル、南北約75メートル。構造は木造のトタン張り。中央に客が利用する通路があった。2階建ての店舗兼住居が天井でつながる長屋形式だったため、火の回りが早かった。

明石の最新
もっと見る

天気(9月19日)

  • 28℃
  • ---℃
  • 10%

  • 28℃
  • ---℃
  • 0%

  • 30℃
  • ---℃
  • 10%

  • 30℃
  • ---℃
  • 0%

お知らせ