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高校教師を早期退職し、カフェ「キトツチト」を始めた安川雅則さん=明石市魚住町清水
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高校教師を早期退職し、カフェ「キトツチト」を始めた安川雅則さん=明石市魚住町清水
カフェ経営について話す安川さん=明石市魚住町清水
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カフェ経営について話す安川さん=明石市魚住町清水

 高校の教師を早期退職した安川雅則さん(60)=兵庫県明石市硯町=が、昨年秋、移動式のカフェ「キトツチト」をオープンした。開業から半年、まだまだ知名度は低く、軌道に乗ったとは言えない。だが、長年の夢だったカフェ開業を実現し「試行錯誤しながら、自分なりの店を作っていきたい」と満足そうだ。(勝浦美香)

 安川さんは、2016年まで高校の体育教師だった。部活動では、ソフトテニス部の顧問として明石西高校を県総体3連覇に導いた実績もある。

 一方、自分の店を開きたいという夢もずっと持っていた。

 息子が陶芸をしていることもあり、手作りの食器でコーヒーを飲んでもらえるような店を、定年退職後に開こうと考えていた。

 しかしその予定は急きょ変更されることになる。定年退職を4年後に控えた14年、肺に腫瘍が見つかり、手術。「自分はもう死ぬんかな」。ぼんやりとした考えが頭をよぎった。やりたいことを先延ばしにしていても、いつできるのか分からない。それならば。16年3月、当時勤めていた北須磨高校(神戸市)を早期退職した。

 いざ本格的に考えてみると、カフェの経営はハイリスクだった。そこで店舗型ではなく、移動車を使うことで資金を抑え、コーヒーと一緒に売れるような軽食を販売することにした。

 女性受けを狙い、メニューは見た目がおしゃれなパニーニやホットドッグに決めた。調理は自己流だが、最近は「おいしい」「普段はどこで売っているの」と声を掛けられるようになった。

     ◇

 最近は、毎週水曜に明石駅東にある「ひかりクリニック」(山下町)の駐車場に、それ以外の日は北王子町の県立大明石看護キャンパス近くに車を止めて営業している。

 安川さんは「本来、移動式の店というのは人が集まる場所に出向いて売り上げを出すもの。でも自分はもっと違う道を選びたい」と話す。当面の目標は、地域に根ざした店。「車のあるところまで、買いに来てもらえる店にしたい」

 これからも目標はどんどん変わるかもしれない。だが、そういう自由さこそが「このスタイルの魅力」と笑う。

 「キトツチト」は、午前9時~午後5時ごろまで営業。ハムチーズたまごのパニーニ、明太ポテトのパニーニ(いずれも500円)、ホットドッグ(400円)などがある。

■明石清水高で久々の授業 経営の苦心、やりがい語る

 安川さんは今月、久しぶりに教壇に立った。場所は明石市魚住町清水の県立明石清水高校。授業を受けた3年生約40人は、今年11月に地域の商店街活性化を狙ってJR魚住駅北側でカフェを開く計画がある。その前に安川さんが店舗経営のノウハウを伝えた。

 「コミュニティー創造」の授業。「社会を創る」というテーマで、生徒がグループごとに提案するカフェを週替わりで営む。店のコンセプトやメニューはこれから決める。

 安川さんは生徒たちに自分の半生を語った。子どものころ、やんちゃな生徒に「父ちゃん」と慕われる先生を見て教師にあこがれたこと。病気のこと。退職と起業の決断……。

 安川さんは「僕の場合は喫茶店をやりたい思いが強かったから、コーヒーは絶対必要だった」と話し、「コーヒーに合う料理や素人でも手軽に作れるメニューを探して決めた」と出店の経緯を語った。

 生徒からは「お客さんの顔は覚えているか」「稼いだお金は何に使っているのか」などの質問が出た。

 安川さんは「今はなんとか赤字が出ないレベル。経済的には不安定だし、先生の方が絶対に安定している」と、経営の厳しさを伝えた。

 講義の後は、校内に車を止め、コーヒーやパニーニを販売した。男子生徒(18)は「やりたいことをやるには大きな覚悟がいるのだと分かった」。女子生徒(18)は「1人で商売する難しさが分かった。勇気と決断がいるんですね」と受け止めていた。

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