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 467人--。監督の狭間善徳(54)が明石商野球部で教えた部員の総数(現役含む)だ。背番号を付けてベンチ入りできる確率は、単純計算でおよそ6分の1。残り6分の5、つまり多くの部員は夏の決戦をスタンドで見守るしかなかった。

 初の栄冠をつかみ取った明石商の「6分の5」の側から、夏にかける思いをつづる。

    ■   ■

 夏の甲子園初出場を決め、歓喜に沸く明石商の一塁側スタンド。大学生岡田海(19)=兵庫県三木市=は1年前のあの日を思い返していた。

 今日と同じように暑かったはずなのに、記憶はうつろだ。

 2017年7月、高知県須崎市の明徳義塾高野球部グラウンド。

 高く上がった打球が、明徳の選手のグラブに吸い込まれた瞬間、岡田の頭の中は真っ白になった。「これで俺の高校野球生活が終わった」

 全国高校野球選手権の兵庫大会を1週間後に控えていた。ここで活躍できなければ、「1班」と呼ばれるベンチ入りメンバーの練習をサポートする立場に回ることになっていた。

 ピッチャーの岡田は明徳戦の2週間前まで1班だった。練習試合で登板したが、1イニングで5失点、1アウトも取れないまま交代した。翌日、グラウンド脇の観覧席に設置されたホワイトボードの「1班」に、岡田の名前を記したマグネットはなかった。

 観衆がいない明徳戦は「必ず結果を出し、最後に1班へ戻る」と心に決め、課題と指摘されたコントロールに集中して臨んだが、思うような結果を残せなかった。

 この明徳戦が、岡田を含む3年生23人の“最後の夏”になった。

 明石商野球部は、部員が100人を超えるようになった頃から、部員を1~4班に振り分け、ローテーションで練習する方式を採用している。だから、ホワイトボードに掲示される「班分け」は部員の最大の関心事だ。登校後や授業の合間、練習前にはいつも、ホワイトボードを見上げる部員の不安そうな姿があった。

 練習試合で好成績を残した1年生が1班に昇格することもあれば、練習で手を抜いた3年生が降格することもある。監督の狭間善徳(54)は日々、ホワイトボード上のマグネットをせわしなく移動させる。

 外野での球拾い、ボールボーイ……。「2班に落ちた」岡田は、わだかまりを胸にしまい、1班の練習を懸命に支えた。それでも1班の練習態度に「もっと必死にやれよ」と、悔しさがつい口をつくことがあった。

 最後の兵庫大会。スタンドで応援しながら、場面ごとに「俺ならどうしたやろ」と考えた。「やっぱりグラウンドに立ちたい」。そんな思いが消えないままチームは決勝で負け、夏が終わった。自分が出た明徳戦よりは冷静に試合を見られたからだろう。空の青さとスタンドの暑さを鮮明に覚えている。

 大学へ進み、野球部に入った。明石商野球部との雰囲気の違いに戸惑った。「このまま野球を続けるのか」

 悩んだ末、野球部と距離を置くことにした。思いがけなくできた夏の「空白期間」に、母校の快進撃を知った。仲間とともに準決勝からスタンドへ足を運んだ。

 身を焦がすような日差しに、高校最後の一戦をスタンドから見守った夏がよみがえる。「あの暑さは特別だった」

 後輩の熱気に背中を押された。もしかすると、それを求めてこの場に来たのかもしれない。

 もう一度、グラウンドを目指そう。野球を続けられる場所を求め、新たな一歩を踏み出す決意が岡田の中で固まった。

=敬称略=

(小西隆久)

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