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元明石市部長のパワハラについて謝罪する同市幹部=2018年5月22日、明石市役所
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元明石市部長のパワハラについて謝罪する同市幹部=2018年5月22日、明石市役所

 前市長・泉房穂(55)は1963年、兵庫県明石市二見町で代々続く漁師の家に生まれた。地元の小、中学校を経て明石西高校から東京大教育学部に進む。卒業後はNHKでディレクターを務め、31歳で弁護士に。万引で起訴された60代の元ホームレスを、音信不通になっていた長男につなぎ、実家の九州で暮らせるよう見届けたこともあった。

 2011年、明石市長を2期務めた北口寛人(53)が3期目の立候補を断念。05年の衆院選で落選し、民主党の国会議員から弁護士に戻っていた泉は迷うことなく立候補し、次点とわずか69票差で勝利する。

 「なりたかった市長にやっとなれた。一生続けたいくらいの気持ちだ」

 周囲にそう語った泉は、人にやさしいまちづくりを目指し、市政のかじ取りをスタートさせた。

 所得制限なしで、中学生以下の医療費と第2子以降の保育料を無料化。中学校給食の完全実施……。手厚い子育て支援策を次々と打ち出した。

 弁護士時代の経験から、生活保護受給や福祉施設への入所仲介など、罪を犯した人を支援する「更生支援・再犯防止条例」を全国で初めて制定。独自路線とその成果は、全国の注目を集めるようになった。

 ただ、最初から順風満帆だったわけではない。

   ■   ■

 情熱的な性格の裏返しなのか、その激しい言動で泉はたびたび周囲とあつれきを生んだ。

 「明石はそんなにマイナーではない」

 18年4月、東播磨県民局が「東播磨ちゃん」という地味なアイドルを仕立てたPR動画を巡り、県民局長に電話で猛抗議した。県民局は一時、配信を停止。だが、泉への批判が相次ぎ、動画はそのままの形で再公開された。

 1期目は議会とぶつかる場面も目立った。市長選の公約だった「議員定数削減」の条例化を一方的に通告し対立。「自主的に削減する方向性が市会から示された」と主張する泉に、「事実と異なる」と反発した議会が「反省を求める決議案」を全会一致で可決した。それでも泉は「議会こそ反省すべき」と譲らず、「議会が大混乱した」と市議は振り返る。

 「自分の思い通りにならないと声を荒らげて部下をしかる。普段からそう」

 ある市幹部が明かす。

 激高してパーティションを壊した。ゴミ箱を蹴られた。今すぐ辞表を書けと迫られた……。

 市役所に精通した人であれば少なくない人が知っていた話だ。だが、情報の出どころを悟られないようにするためか、関係者が言葉を濁し、問題が顕在化することはなかった。

 市長の存在感が高まっていく背景には、人口増や中核市移行など実績を上げる中で、泉への信頼が醸成されていった面が強い。

 一方、「スピード感、適材適所」の名目で部長ら管理職を3カ月で変えたり、定期異動とは別のタイミングで頻繁に人事異動したりと強権的な側面も垣間見せた。

 「職員が常に市長の顔色をうかがうようになっていた」。ある職員は打ち明ける。

 問題となった音声データの流出も、職員のこうした不信感とは無関係ではない。

   ■   ■

 市は昨年6月、職員10人に殺虫剤を噴霧するなどのパワハラやセクハラ行為を繰り返した元部長(59)=当時=を停職6カ月の懲戒処分にした。その日、元部長は依願退職した。

 泉は「外部の目も入れた検討チームを立ち上げ、早急に再発防止策を検討する」と陳謝した。

 だが、この1年前、泉は「火を付けてこい」などの暴言を、すでに市幹部に浴びせていたことになる。

 泉はその後、外部弁護士や副市長らでつくる「緊急対策検討チーム」を立ち上げ、パワハラやセクハラの基準を明確化し、懲戒処分の指針を定めたガイドラインを策定した。「自分のことは棚に上げて…」。実情を知る市職員の間に、白けた雰囲気が広がった。

 「部下を厳しく処分してきた自分を甘くするわけにはいかない」

 今月1日の辞職会見でこう繰り返した泉。ある中堅職員はつぶやいた。

 「いつかはこうなると思っていた」

(敬称略)

(小西隆久、藤井伸哉)

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