明石

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明石空襲の犠牲者の遺骨が眠る二つの墓に手を合わせる人々=大聖寺
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明石空襲の犠牲者の遺骨が眠る二つの墓に手を合わせる人々=大聖寺
明石空襲で最多の犠牲者が出た6月9日を前に、慰霊祭が開かれた=大聖寺
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明石空襲で最多の犠牲者が出た6月9日を前に、慰霊祭が開かれた=大聖寺
住職の松尾義康さん
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住職の松尾義康さん

 兵庫県明石市上ノ丸1の大聖寺は毎年1月と6月、明石空襲の犠牲者を追悼する慰霊祭を営んでいる。境内の片隅には、死者を供養する二つの墓。多くの犠牲者を出した川崎航空機(現在の川崎重工)と明石市がそれぞれ建立した。2013年の建て替えで墓を掘り起こすと、数百人分とみられる大量の遺骨が出てきたという。住職たちが3代にわたり供養を続ける慰霊祭が2日、同寺であった。(勝浦美香)

 1945年1~7月、明石市は計6回の空襲を受けた。1月19日の一度目は、戦闘機を製造していた川崎航空機明石工場が狙われ、学徒動員として働いていた少年少女322人が犠牲に。6月9日の二度目の空襲では、明石公園周辺が攻撃され、公園に逃げ込んだ電車の乗客なども含め、最多となる644人が犠牲になった。

 まとめて火葬された多数の遺体は誰のものかも分からず、引き取り手がないものが多かった。

 当時、同寺には川崎航空機の寮があり、21世の花谷日成住職は、少年少女らの指導役としても関わっていた。川崎航空機と明石市は、縁の深かった同寺に、引き取り手のない遺骨を供養してもらうことにした。

 終戦の翌年には、「戦災死者の精霊」と彫られた墓を明石市が建て、遺骨を納めた。川崎航空機も59年、その隣に正式な墓を建立。終戦後、遺族から骨を預かってほしいと頼まれた分だけでも105柱あり、二つの墓には入りきらなかった。

 花谷住職は終戦直後から、1月19日には川崎航空機明石工場で、6月9日には明石市が建てた墓の前で、慰霊祭を行った。遺族や同社の関係者に案内状を出し、大人数が集まった。

 花谷住職は62年に死去。後継者がいなかったため、寺は無人の状態になった。

 だが、住職がいない間も京都の寺から代理の住職が訪れ、慰霊祭は途切れることなく営まれた。

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 新しい住職が就任したのは5年後。山梨県の身延山短期大学に勤務していた猪俣日康さんが、推薦を受けて22世住職となった。

 就任前、荒れ果てた寺を訪れた猪俣住職は、二つの墓と、その周りにぎっしりと積まれた105柱の遺骨を目にした。

 「このままでは犠牲者の霊がかわいそうだ。供養しないと、宗門の恥になってしまう」と、他の大きな寺への推薦があったにもかかわらず、妻子を連れて明石へ移住した。

 猪俣住職は、檀家も少なくなっていた寺を復興させるとともに、入りきらない遺骨を納めるため、74年には寺の門付近に慰霊塔を建立した。

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 時は流れ、95年の阪神・淡路大震災で、寺は大きな被害を受ける。

 明治時代の木造建築。本堂は半壊、一部は全壊だった。既に80歳を迎えていた猪俣住職は、副住職だった松尾義康さんに後継と復興を託した。

 修理でごまかしてきたが、2013年、思い切って全面建て替えをした。

 解体時、掘り起こした二つの墓からは、数百人分とみられる大量の遺骨が出てきた。「70年も前のものだから、土に返っている部分もあったが、袋に入れるとずっしりと重かった」と松尾住職は振り返る。

 翌14年、新しくなった寺の片隅に、改めて二つの墓を建てた。墓石は当時のままだ。

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 2日の慰霊祭では、檀家ら約15人が集まり、墓石に向かって手を合わせた。その中に遺族や関係者はいなかった。

 松尾住職によると、年月とともに遺族も高齢化し、大阪から来ていた最後の1人も、9年ほど前から来なくなったという。

■住職の松尾義康さん 惨禍を次世代へ伝えたい

 1981年に大聖寺の副住職になった。

 出身は福岡県だが、空襲の犠牲者を慰霊し続けてきた寺の歴史とともに、後継者がいないことを知り、決意した。

 95年の阪神・淡路大震災では寺自体が大きな打撃を受けた。それを期に、先代から住職を受け継いだ。

 「震災で寺はめちゃくちゃだったが、供養を続けないと先代、先々代の努力は水の泡。寺をつぶすわけにはいかなかった」と振り返る。

 終戦から時がたつとともに、墓を参る人は減っていった。「遺族は高齢化し、亡くなっていく。風化するのは仕方がない」とは思う。だが、「歴史を知らないのは危険なこと。無知が広まると、すぐに『戦争を』を言う人が増えてしまう」と憂う。北方領土をめぐる国会議員の発言に、時代の変化を感じる。

 惨禍を次世代へ伝えたい。太平洋戦争のすべての犠牲者に祈りをささげたいと、4年前には寺の屋上に高さ約2メートルの日蓮銅像を建立した。JRや山陽電鉄の車窓からも見ることができる。

 「今の明石市民で、この墓の存在を知っている人はほとんどいないだろう。どなたでもいい。お墓を参りにきてほしい」と呼び掛ける。(勝浦美香)

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