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軍歴などが書かれた本の一部
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軍歴などが書かれた本の一部

 「1銭5厘の消耗品ですからなぁ」

 法事で酒を酌み交わしながら、父方と母方のおじいちゃん二人が、昔話に花を咲かせている。母方のおじいちゃんは鳥取県在住。二人が顔を合わすことは少なく、ともに冗舌なタイプではなかったが、会えば必ず戦争の話で盛り上がっていた。

 そういえば、父方のおじいちゃんは、戦友の近況を記した1376ページに及ぶ分厚い冊子を大事にしていたなぁ。どちらも30年以上前のうっすらとした記憶だ。

 二人とも20歳ごろに召集された。

 父方はインドシナ半島に陸軍の兵隊として出征。マラリアを患って生死の境をさまよい、1年近く捕虜生活を送ったようだ。

 母方は確か海軍。軍艦か輸送船か分からないが、乗っていた船が魚雷で沈没し、漂流物につかまって九死に一生を得たらしい。

 ただ、私はこれ以上のことを知らない。両親に聞いても、戦争のことは二人ともあまり話さなかったようだ。生きていればともに96歳だが、鬼籍に入った。

     ◆

 私は41歳。抽象論で戦争が語られることが多くなったように感じている。

 「戦争を知らない世代だからこそ、集団で殺し合う戦争とは何か。実相を知りたい」。そんな思いで今夏、おじいちゃんと同世代で、元特攻少年兵の伊原昭さん(92)=明石市=の体験を明石版で連載した。

 機銃掃射や空襲で戦友を失った生々しい証言を聞いたが、それ以上に印象に残った言葉がある。

 「軍人だけがえらい目にあったんじゃ、ありゃしません。国民全員、近隣諸国も、どんだけようさんの人がひどい目にあったか」

 伊原さんは、敵味方なく多くの命を奪う戦争の愚かさを説き、講演活動を続けている。

     ◆

 きょう8日は、おじいちゃんや伊原さんたちが戦地に赴いた太平洋戦争の開戦から78年。

 冒頭の「1銭5厘」は、当時の郵便代で、召集令状(赤紙)の比喩表現だ。上官は「お前らの代わりは1銭5厘でなんぼでもいる」と異口同音に言い放ったと聞く。

 命のあまりの軽さに驚く。「勝てば官軍」というが、もし日本が戦争に勝っていたら、命の重さを今のように感じることができただろうか。人命に勝ち負けは関係ない。

 戦争の悲惨さを感じ続けるため、おじいちゃんたちの軍歴の証明書を取得しようかと、墓前で思う。きょうは、父方のおじいちゃんの命日でもあるから。(藤井伸哉)

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