明石

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収穫直後の清水いちご=2019年12月6日、明石市
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収穫直後の清水いちご=2019年12月6日、明石市
橋本匠さんが摘み取った直後のイチゴ。明石市内の製菓店に出荷されていった=明石市
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橋本匠さんが摘み取った直後のイチゴ。明石市内の製菓店に出荷されていった=明石市

 兵庫県の明石といえばタイ、タコ、ノリ? いえいえ、それだけではありません。明石市西部の魚住地区で盛んなのは農業。大阪、神戸の大消費地に近い旧山陽道沿いでは昔からコメや野菜が栽培されてきました。中でも「清水いちご」は地域ブランドとして地元農家が改良を重ねてきた「幻のイチゴ」。後継者不足で農家が減る中、20代の若手が奮闘しています。(吉本晃司)

 12月の朝。摘み取られた大粒のイチゴが、次々に箱に詰められていく。寒い!

 「温かい場所では作業しません。摘み取りと箱詰め以外は触らず、傷を付けないようにしています」

 同市のイチゴ農家、橋本匠さん(27)は、細心の注意を払って箱詰めしたあと、軽自動車で直売所や製菓店に出荷していく。

 甘くて柔らかいイチゴは、5戸の農家でつくる組合とJA兵庫南が「清水いちご」としてブランド化している。

 橋本さんは組合の農家で最も若い生産者だ。

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 清水いちごを一躍有名にしたのは、クリスマスケーキだ。

 イチゴは春に収穫する「果実的野菜」。冬には収穫できなかった。

 清水地区では稲作の休閑期にダイコンなどを作っていたが、重労働のため実が軽いイチゴの栽培を1954年に開始。収穫時期を長くして安定した収益につなげようと、匠さんの祖父、正さんらが研究を重ねた。

 60年代、一つの成果が出る。苗を但馬の山間地で育てる促成栽培に成功したのだ。ハウスによる温度管理で「早く冬が終わった」とイチゴに錯覚させ、年末から収穫可能になった。

 クリスマスケーキに摘み立ての甘~いイチゴが乗るようになったのは70年代だ。

 今は品種改良で全国のイチゴ農家が冬に出荷できるようになり、イチゴショートはスイーツの定番になった。正さんは2014年、イチゴ栽培の技術と指導力で日本特産農産物協会から「地域特産物マイスター」に認定された。

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 清水いちごは甘くて柔らかい。完熟で摘み取るからだ。

 完熟は傷みやすく、長距離の輸送に向かない。出荷は大阪、神戸、姫路までが大半。清水いちごは関西以外ではほぼお目にかかれない「幻のいちご」なのだ。

 3年前、86歳で亡くなった正さんを継ぎ、匠さんはサラリーマンを辞めて専業農家になった。中学生から祖父を手伝っていたから、自然の成り行きだった。

 「毎年試行錯誤ですが、自分でやったことがそのまま返ってくる。農業って自由。同じ目線で話ができる同世代の農家が増えたらいいですね」と笑う。

【編集後記】

 橋本匠さんは高校時代、生物部でため池を研究していた。「ため池も含め、里山は人間が管理しているけど“自然”。農地で生きる生物もいる」。つまり、農地も自然だ。

 清水いちごは、水、温暖な気候、長い日照時間が重なり栽培の適地になった。

 後継者不足で耕作放棄地が増えれば自然のバランスが崩れる。匠さんにとって、地元で農業を継ぐことが自然を守ることなのだ。

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