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63幅の掛け軸を修復した宮本正義さん=明石市
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63幅の掛け軸を修復した宮本正義さん=明石市

 高齢者大学で表装を学んだ兵庫県明石市の宮本正義さん(79)が、菩提寺の常楽寺(同町)が所蔵する掛け軸63幅の修復を完遂した。新型コロナウイルスで想定外の事態にも見舞われたが「妻や友人の助けで初めての大仕事を終えることができた」。心安らぐ穏やかな表情に鮮やかさを取り戻した阿弥陀如来の尊顔に、安どの笑みを浮かべる。(長沢伸一)

 宮本さんは退職後、明石市立高齢者大学校「あかねが丘学園」で水墨画を勉強。次は自分の作品を軸にしてみようと、2006年に県の「いなみ野学園」(加古川市)へ。クラブ活動などを通じて15年間、表装一筋に知識と技術の体得に努めた。

 常楽寺から収蔵品の修復の話が舞い込んだのは昨年9月。小川太喜住職(67)が檀家(だんか)の宮本さんの腕を見込んで依頼した。

 掛け軸は明治初期、西国三十三所霊場や浅草寺(東京都)など、日本各地の寺院を参詣した記念に檀家が寄贈したとの記録が残る。同一の絵師の手によるとみられ、寺院の本尊などが描かれている。

 同寺では倉庫に保管し、毎秋の行事で披露していたが、近年は布が破れるなど傷みが目立つようになった。宮本さんは掛け軸に見入るうち「約120年を経てなお色鮮やかさをとどめる阿弥陀如来に引かれて」、引き受ける決意をした。

 まず掛け軸を解体し、絵が描かれた本紙を取り出した。本紙はしわやたるみを防ぐため、3枚の裏紙が使われており、霧吹きを使いながら慎重に1枚ずつはがした。紙がうまく離れず、湯に漬けながら作業をしたことも。「鉱石を砕いた絵の具なのでぬれてもにじまないが、和紙が破れたらおしまい。すごく神経を使った」

 専用ののりを使い、裏紙の張り直し作業が本格化し始めた頃、新型コロナウイルスの感染が拡大。修復に不可欠な和紙やのりが入手できなくなった。

 思わぬ事態に当惑していた宮本さんを見かねて、学園の仲間たちが材料を譲ってくれた。周囲の支援を受けて作業は再開。8月、預かった全63幅の修復を終えて同寺に納めた。

 重責を果たした宮本さん。脱力感で1週間ほど、何も手に取る気が起こらなかったという。「貴重な経験ができ、今まで生きてきた中で一番楽しい1年だった。受け継いできた大切な掛け軸をこれからも長く使ってもらえたら」とほほ笑んだ。

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