就活応援、学生目線で新事業 最終面接不採用者を他企業に仲介

2021/03/30 05:30

他社で最終面接に残った学生を採用できるサービスを始めた久保駿貴さん=明石市相生町2

 「今後のご活躍をお祈りします」で締めくくられるのにちなみ「お祈りメール」と呼ばれる不採用通知。これに着目した新たな就活生応援サービスを学生起業家の久保駿貴さん(23)=兵庫県明石市=が始めた。企業に対し、言葉でお祈りするだけでなく、最終面接までこぎ着けながらあと一歩及ばなかった学生を推薦し、就活を後押しする力になってほしい-との学生目線の発想から新サービスは生まれた。(長尾亮太)


 久保さんが立ち上げたベンチャー企業「ABABA(アババ)」のサービスの手順はこうだ。学生に不採用を告げるお祈りメールの中で、企業は「最終面接まで頑張ってくれた優秀な学生として推薦したい」などとアババへの登録を促す。一方でこのように集まった人材に対し、これから採用を考えている他の企業が個別に自社の選考を受けるように勧める。採用人数に応じて企業から支払われる料金がアババの収益となる。
 人材のたまり場には、選考をくぐり抜けた学生ばかりが集まるため、採用したい企業にとっては手間暇をかけずに適材を見つけやすいのが利点だ。
 久保さんは大学で気象学を学ぶ一方、起業を模索してきた。それまで志望企業への思い入れを熱く語っていた友人が、お祈りメールが届くなり「この企業の商品は買わない」と嫌悪感を抱く様を目の当たりにして事業モデルを思い付いた。この就活生応援サービスでは、不採用を告げた企業にとっても、学生が抱く企業イメージを悪化させるリスクを避けられるメリットがあるという。
 久保さんは昨年10月に友人らとアババを設立し、同11月からサービスの提供を始めた。この事業モデルは今年2月、学生向けの事業コンテストで最優秀となる経済産業大臣賞を受賞。既に企業約90社、学生約千人が登録しているという。
 久保さんは「これまでの就活は、セーブできないロールプレーイングゲーム(RPG)のようなもの。クリア寸前でも、負けたらまた一からになる」と指摘。「新サービスにより、それまでの頑張りが評価してもらえるような就活にしたい」と力を込める。

【お祈りメール】選考を受けた学生に対し、企業が不採用を告げるために送るメールのこと。「今後のご活躍をお祈り申し上げます」などの文言で結ばれることが多いことにちなむ。就活生の間では、不採用となったこと自体を「祈られた」「お祈りされた」とも表現する。

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