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高さ約6メートルの巨大蒸留器「ポットスチル」=明石市大蔵八幡町
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高さ約6メートルの巨大蒸留器「ポットスチル」=明石市大蔵八幡町
海外進出への歩みを振り返る米澤仁雄社長=明石市大蔵八幡町
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海外進出への歩みを振り返る米澤仁雄社長=明石市大蔵八幡町
国道2号、JR神戸線に面したガラス張りの「海峡蒸溜所」=明石市大蔵八幡町
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国道2号、JR神戸線に面したガラス張りの「海峡蒸溜所」=明石市大蔵八幡町

 兵庫県の明石海峡で取れる明石ダイは、言わずと知れた魚の全国ブランド。明石酒類醸造の日本酒「明石鯛」は、「AKASHI-TAI」として世界30カ国以上で飲まれている清酒ブランドだ。

 原料にこだわり、三木市産の山田錦を100%使用した特別純米酒。米のうま味が引き立つ、すっきりとした味わいでファンを育ててきた。

 しかし、国内では大手メーカーを中心に競争が激しく、知名度を上げるにも苦戦した時期がかつてあった。

 「会社を長い目で見た時に、このままでは生き残っていかれへん。ブランドではなく、味で勝負できる海外に行こう」

 欧州を中心に日本酒の販路を広げ、今や売り上げの9割以上を海外が占める。「困難な状況こそチャンスと捉える」という米澤仁雄社長(61)の枠にとらわれない手腕が、新たな境地を切り開いてきた。

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 2005年、日本貿易振興機構(JETRO)主催の国際展示会。米澤社長は明石鯛を初出展し、続けて欧州やアジアの展示会に参加。1年の3分の1を海外で過ごしながら2年間、手応えを探った。「時間とお金を使って全くもうけはなかったけどね。知恵と人脈ができた。やりようによって可能性はあると」

 まず、日本酒市場が小さかった英国に目を向けた。日本食を出す店がある大都市ではなく、競合のない中小都市の小売店や飲食店で地道に営業を進めた。「オセロを順番にひっくり返していった」と米澤社長は当時の戦略を振り返る。

 ローカル市場で認知度が上がると、欧州各国から商談が相次いだ。海外品評会での受賞がさらに明石鯛の評価を高めた。現在は欧州やアジア、米国など35カ国に年間約9万ケース(1ケースは720ミリリットル入り6本で換算)を輸出する。

 海外と日本の橋渡しを担うのは、ロンドンに常駐する社員小松美穂さん(51)。展示会で通訳ボランティアをした縁で、8年前から同社の海外進出を支える。一から酒について勉強し、「●(きき)酒師」の資格を取得。輸出先の国々を飛び回り、現地の輸入業者との交渉や明石鯛を扱う飲食店の従業員に日本酒教育を行う。

 「日本酒をより多くの人に愛してもらうために、まずは日本の伝統や文化を知ってもらうことが大事。海外にいる強みを生かしたい」

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 明石鯛を醸造する酒蔵と背中合わせに昨年完成した「海峡蒸溜所」。国道2号に面する全面ガラス張りの施設内に真新しい蒸留器のポットスチルが輝く。麦芽を発酵させたもろみを蒸留し、アルコール度数の高い液体を取り出す機械でウイスキー造りの要の工程だ。米澤社長は「うちの新しいシンボル」と胸を張る。

 15年、オランダに拠点を置く酒販グループ「マルシアグループ」に入った。欧州市場でのてこ入れを図る一方で、「ジャパニーズウイスキーを造りたい」との提案を受けた。そこで米澤社長が本場スコットランドで研修。5年前からウイスキーの製造と輸出に着手した。

 新蒸留所は既に稼働し、海外産をブレンドしたウイスキーを海外で販売。自社で製造したモルトウイスキーのみを瓶詰めした「シングルモルト」の販売が次の目標だ。

 さらに「東経135度兵庫ドライジン」と命名したジンの新商品も昨年11月に発売。神戸市のシソや姫路市のユズで香り付けし、和と洋の融合を楽しめる味に仕上げた。

 「もっと技術を磨き、日本と海外の良さを取り入れた酒を造る。まだまだやるべきことはたくさん」。あくなき情熱が背中を押す。(川崎恵莉子)

【明石酒類醸造(大蔵八幡町)】1918(大正7)年設立。創業は1856(安政3)年。2009年に船上町から醤油蔵跡があった現在地に酒蔵を移転した。試飲やセミナーの開催ができるビジターセンターを5月、海峡蒸溜所の隣に開設予定。TEL078・919・0277

<編注>●は口へんに「利」

【バックナンバー】
(4)和洋を生む 江井ヶ嶋酒造
(3)通をうならす 太陽酒造
(2)家族で造る 西海酒造
(1)波涛を越えて

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