亡き母へ最後の親孝行 女手一つ3人の娘育てながら打ち込んだ日本画の遺作展
2022/02/23 05:30
亡き母が残した日本画の個展を開いた三女の山本りえ子さん(右)と長女の原田律子さん=明石市東仲ノ町
亡き母が残した日本画を見てもらおうと、兵庫県明石市の山本りえ子さん(67)が23日からアスピア明石(同市東仲ノ町)の北館8階、ウォールギャラリーで母の最後の個展を開く。今も目に焼き付いているのは、女手一つで3人の娘を育てながら、創作活動に打ち込んでいた後ろ姿。作品は高野山(和歌山県)の観光施設への寄贈が決まっており、「家族の手元を離れる前に、せめてもの親孝行を」と思いを込める。(川崎恵莉子)
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神戸市西区で暮らしていた母の増田恵美さんは、子育てが一段落した50代から、勤め帰りに文化センターでずっと憧れていたという日本画を学び始めた。個展やグループ展を開きながら研さんを続け、明石市主催の公募展などで入選を重ねるまでに上達した。
舞妓(まいこ)をモデルにした美人画が多く、女性の表情や着物の繊細な表現を得意とした。大谷記念美術館(西宮市)など複数の教室を掛け持ちしながら2006年に81歳で亡くなるまで絵筆を振るった。縦横1メートルを超える大作を含め、100点以上の日本画を残した。
一部は知人らに譲り、残りの数十点は西宮市に住む長女の原田律子さん(74)宅で長年保管していた。三女のりえ子さんは「ずっと置いておくわけにもいかないと思いながらも、母の描く姿を思い出して手放せなかった」と振り返る。
母に対する後悔の念もあった。「たくさん迷惑を掛け、いなくなってから感謝の気持ちがあふれてきた。せめて置き忘れてきた親孝行をしたい」
母が精魂傾けた遺作を披露する場を求め、高齢者施設に寄贈を打診するなどおもいつくままに動いた。新たな引き取り先が見つかればとの期待から企画したのが今回の個展だった。
そんな中、友人の紹介で観光客向けに高野山奥之院のナイトツアーを行っている観光案内所へ寄贈できることが2月中旬に決まり、今回の個展は地元で最後にお披露目できる機会になる。会場では美人画の舞妓や三宝柑(さんぼうかん)、ひな人形などを題材にした寄贈予定の全15点を含む16点を展示する。りえ子さんは「友人らたくさんの人の協力があって、母の作品がまた日の目を見ることになった。きっと母も喜んでくれているはず」と話す。
午前10時~午後8時。3月2日まで(最終日は午後3時まで)。無料。