明石公園、切り株だらけに 「過剰な伐採」子ども名付けた木も 兵庫県「眺望妨げる」
2022/02/24 05:30
樹木伐採後の県立明石公園(2022年1月撮影)
兵庫県が明石公園で進める樹木の伐採事業をめぐり、市民グループが「過剰な伐採が見られる」と主張し、にわかに注目が集まっている。事業計画の中断・見直しを訴える市民グループに対し、県は公園内にある明石城跡の石垣保全や景観向上のため、2022年度も伐採を続ける方針。都市公園と史跡の側面を併せ持つ開かれた場として、情報公開を含む管理のあり方が問われている。(松本寿美子)
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■約1700本を伐採
樹木伐採は、明石城の築城400年を前に、県が2018年度から実施。県によると、「石垣の原則5メートル以内の木」「明石駅ホーム上や園内の芝生広場など、公園南側の8カ所から見て眺望を妨げる木」が伐採の対象となる。
「5メートル以内の木」は石垣裏側の細かな裏込め石の層などに根が張り、石垣が浮いて崩壊するのを防ぐため。「眺望を妨げる木」は、その長さが全国屈指という東西約380メートルに連なる石垣の全貌が見渡せるようにするのが目的だ。
県によると、これまでに伐採した樹木数は18年度301本▽19年度313本▽20年度683本。21年度は630本の計画のうち390本を伐採済み。残り240本については「希少種や景観木(サクラ、モミジ)を残したいが、その精査が他の工事で手が回らない」と22年度に持ち越した。石垣周辺の崩落危険箇所の伐採や、土塁の垣根に生えた樹木の剪定(せんてい)も実施する予定だ。
■観察対象の木が…
伐採によって一帯が切り株だらけになり、急激な景観の変化に市民からは困惑の声も聞かれる。
これまでに公園の生物多様性の保護などを求め、植物研究者らでつくる「明石公園の自然を次世代につなぐ会」(小林禧樹代表)と「日本野鳥の会ひょうご」が、斎藤元彦県知事らに要望書を提出した。
「つなぐ会」によると、公園には92種の希少な動植物が見られ、日本に飛来する野鳥の10分の1にあたる66種や、絶滅危惧種の昆虫30種ほどが確認されているという。
さらに園内の樹木は、市内の小学生の環境教育の教材としても活用されてきた。ところが、子どもたちが名前を付けて1年通じて観察していたモッコクの木が切られたケースがあったという。同会は「県立公園であっても、特定の有識者の意見だけでなく、地元の市民の声を聞きながら丁寧に進めてほしい」と訴える。
子育て中の保護者や学生らでつくる市民団体「明石公園の緑を考える会」は緊急オンラインフォーラムを開催。22日にオンラインで募った2万筆を超える署名を県知事に提出した。
■多様な意見に配慮を
市民の緊急フォーラムでは、石垣保全のあり方について、県の管理方針と真逆の説の発表もあった。「つなぐ会」メンバーで造園業の法貴弥貴さん(39)=神戸市垂水区=は「木の根がむしろ石垣を守ってくれる」と主張。「木は土中の空気と水の循環を生み、大雨でも過度な土圧がない安定した石垣になる」と説明し、石垣がマツやスギの巨木の根に覆われて一体化した複数の写真を示した。
文化庁の「石垣整備の手引き」では、石垣周辺の木々は崩落の原因になるため早期の除伐を求めている。県教委文化財課も「木が生えていなかった石垣本来の姿に近づけるという文化財保護の観点から問題はない」と話す。
一方、手引きでは伐採には多様な意見が出ることを想定し、「専門家や市民の意見を聞きながら具体的な計画や方針をオープンにする」ように求めている。県公園緑地課は「伐採について園内の看板や県ホームページでお知らせしていた」と説明する一方、「全体的なバランスを見ながら伐採していたが、今回は本数が多く、情報公開のあり方にも課題があったと思う。今後は伐採する樹木について市民のご意見も聞いていきたい」と話している。