淡路

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2キロ以上あるタイを手にする橋野吉徳さん(左)と久洋さん親子=鳴門海峡付近の瀬戸内海
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2キロ以上あるタイを手にする橋野吉徳さん(左)と久洋さん親子=鳴門海峡付近の瀬戸内海
五智網漁で網を海に入れる橋野さん親子=鳴門海峡付近の瀬戸内海
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五智網漁で網を海に入れる橋野さん親子=鳴門海峡付近の瀬戸内海

 「平成」最後の正月を迎えた。皆さんの家の食卓に並ぶ縁起物のタイはどこで捕れたものだろうか。兵庫県では、今でこそ「明石ダイ」が有名になったが、南あわじ市阿那賀の丸山漁港で水揚げされる「鳴門ダイ」は大正、昭和、平成と3代にわたり、兵庫県を代表して天皇陛下の即位時の「大嘗祭」などで献上されてきた逸品だ。ただ、最後の献上から約30年、日本人の魚食は減り、タイの価格は下落した。人口減少は進み、小さな漁師町もその波にのまれる。だからこそ、「次の時代も献上を-」。漁師らは「献上鯛」のブランド化に地域の未来を託す。(高田康夫)

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 昨年最後の漁は12月26日だった。丸山でタイ漁を続けて50年の橋野久洋さん(64)と吉徳さん(28)親子は鳴門海峡付近に船を走らせた。

 久洋さんは中学卒業後、父親とともに「五智網漁」の漁船に乗り始めた。潮の流れを計算して浮きを付けた網の片方を海へ。網を入れながらぐるっと1周して浮きを拾い上げ、船を走らせながら網を巻き上げる。しばらくすると、網にかかった多くのタイが海面に浮き上がる。

 「水揚げ量も、おいしさも、平成の初めごろと変わらない」と久洋さん。「だけど、値段は下がって割に合わなくなっている」

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 平成が始まった30年前から、タイを取り巻く環境は大きく変化した。南あわじ市のデータでは、マダイの漁獲量は91年で15万7809キロ、2017年は17万4649キロとほぼ変わらない一方、単価は91年で1キロ2639円、17年は928円と3分の1程度に下落している。その上に燃料費の高騰ものしかかり、漁に出ると赤字になる日もある。

 この30年間の変化について、南あわじ漁協の小磯富男組合長(64)は、(1)共働きの増加に伴う家庭での魚料理離れ(2)小売り大手のじか買いによる相場の値崩れ(3)タイなど高級魚を提供する高級料亭での接待が減少(4)輸入魚の鮮度を保つ輸送技術の進歩-などの要因を挙げる。団塊世代の引退で漁師は減り、丸山では60歳以上の漁師が6割。地区全体でも過疎化が進む。

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 そこで小磯組合長らが注目したのが献上鯛の歴史だ。丸山のタイは大正の大嘗祭で献上され、昭和にも海軍の特別演習が阪神沖であった際に、神戸港で停泊中の艦船の中で天皇陛下に提供された。平成の大嘗祭では、小磯組合長自ら献上作業に関わった。

 次の時代の大嘗祭でも丸山からタイを献上することで、全国的なブランドにして単価を上げるとともに、タイを求めて丸山地区を訪れる観光客を増やしていく意気込みだ。自治会や周辺の旅館とも協力。小磯組合長は「献上鯛の歴史を引き継いでいくことで、漁業や地域の元気につなげたい」と思いを語る。

 平成の献上時には生まれたばかりだった吉徳さん。一昨年末に歴代の天皇陛下にタイが献上されていたことを初めて知った。高校を卒業後、父親と同じ道を歩んで約10年。「これからも続けられる限り、丸山でタイ漁をしたい」。そう願う中、「地域の活性化につながれば」と献上鯛に寄せる期待は大きい。

 橋野さん親子が大鳴門橋近くで揚げた網には数え切れないほどのタイがかかっていた。「これは2キロ以上あるぞ」。そうほほ笑む久洋さんの横で、吉徳さんは立派なタイを持ち上げた。

 世代を超え、時代を超え、御食国淡路島の海の幸が受け継がれていく。

【大嘗祭】宮中祭祀(さいし)の一つで、即位した天皇が初めて執り行う「新嘗(にいなめ)祭」を指す。皇位継承に伴う重要な祭祀と位置付けられている。中心となる「大嘗宮(だいじょうきゅう)の儀」は、11月14~15日に行われる。平成の代替わりでは皇居・東御苑に造営された巨大な大嘗宮で1990年11月22日夕から翌23日未明にかけて行われた。昨年11月30日に秋篠宮さまが国費支出に疑問を呈されたことでも注目された。

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