淡路

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路谷池の前に立つ井戸均さん=淡路市小田
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路谷池の前に立つ井戸均さん=淡路市小田
路谷池の水を調整するハンドル。これができて、泳いで樋抜きをせずともよくなったという=淡路市小田
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路谷池の水を調整するハンドル。これができて、泳いで樋抜きをせずともよくなったという=淡路市小田

 兵庫県の淡路島には「田主」がある。田の主と書いて、「たず」。恥ずかしながら、島で生まれ育ったのに、ぴんとこなかった。島外の人にはなおさらだろう。全国で最もため池が密集しているといわれるこの島に根付く管理組織のことで、その数は推計で2千に上るという。間もなく田植えシーズンを迎え、活動は忙しくなる。いまさらですが、島育ちの記者が田主に迫ります。(上田勇紀)

 島北部、淡路市小田にある路谷池(貯水量11万立方メートル)を訪ねた。田主の元世話人、井戸均さん(85)=同県淡路市=に話をうかがう。井戸さんは20歳のころからおよそ半世紀にわたって世話人を務めたという、田主の生き字引だ。

 「大変だったんは、田植えのための樋抜きやなあ。池を泳いでいって、数メートルもの挿し木を抜くんよ」

 6月、池の底にある栓を抜いて、田主のメンバーの水田へと行き渡らせる。それが「樋抜き」。県の資料では、誤って水もろとも引き込まれ、命を落とした人もいる。まさに命懸けの作業だった。

 「樋を抜くのは『水利人』の役目。世話人はそれを手伝っとった。難しいんは、水を止めるタイミング。間違えると『どなっしょんや』と怒鳴られたで」。止めるのが遅いと、水田に余分な水が流れて無駄になってしまう。それほど、ため池の水は貴重だった。

 阪神・淡路大震災の前年の1994年夏は、記録的な水不足に陥った。旧三原郡(南あわじ市)では農業用水の盗水に備えて、農家が夜通し水を見回る「番水」を行った記録が残る。

 そうした渇水時には、生かす田を選んで水を入れたという。「水を入れないままの田は、『麦わらが立つ』と言われたもんや」と井戸さん。「とにかく、若いころは苦労したで」

    ◇    ◇

 島の住宅地図を広げた。奥池、小原池、皿池、新池…。至る所、池だらけ。ドライブをしていても多くの池にぶつかる。そういえばわが家のまわりも、ため池だらけだ。

 淡路島は雨が少なく、大きな川がないため、江戸期から数多くため池が作られたという。県によると、日本で最もため池の密度が高く、2018年4月時点で、島内3市で2万2785個(淡路市1万3295個、洲本市7005個、南あわじ市2485個)。実際には、廃止されている池も多く実数はかなり減るらしいが、全国一は揺るがないという。

 近年は、ダム建設や減反の影響で、かつてのような水不足はなくなった。懸念されるのは、管理する田主メンバーの減少と高齢化だ。少子高齢化が進み、農家戸数が減ると、管理が行き届かない。そうした池は、地震で決壊の恐れがあったりして、危険性が指摘される。

 県洲本土地改良事務所は19年度、「田主再編推進モデル事業」を始める。ワークショップ形式で田主の課題を洗い出し、水利権を調整するなどして、小さな田主を再編。使わない池を廃止する試みだ。

 これから、田植えが始まる。課題を抱えながらも受け継がれる島のため池文化を、今年はじっくり見てみようか。

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