淡路

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自慢の健康酢を持つ小林俊隆さん。自身の健康が逸品を生み出す=淡路市草香
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自慢の健康酢を持つ小林俊隆さん。自身の健康が逸品を生み出す=淡路市草香

 淡路島(兵庫県)中部の西海岸に近い山あいに、創業120年を超える小林酢製造所(淡路市草香)がある。代表を務めるのは、91歳で元教師の小林俊隆さん。定年退職後に家業を継ぎ、阪神・淡路大震災で被害を受けながら、昔ながらの手作業で酢の製造を続けてきた。蜂蜜などを材料に、栄養と自然の恵みたっぷりの逸品は、多くの人に愛されている。(佐藤健介)

 学徒動員で勉強もままならない戦時中から教師を志し、自主学習で目標の職に就いた。島内の小中学校で約40年間教壇に立ち、校長も務めた。淡路出身の作詞家、故阿久悠さんも教え子の一人。専門は理科。柔道の有段者で、バスケットボールで国体に出場した経験を持つ。2017年には高齢者叙勲で瑞宝双光章も受けた。

 定年退職し、実家の酢製造所を継いだのは1989年。明治中期に創業し、まろやかな滋味が高い評価を受け、内国勧業博覧会でも表彰された老舗だ。

 小林さんは「明治から続く所はまれ。プライドもあったし、酢作りの灯を消してはいけない」と思い、決意したと話す。

 米酢やクエン酸、塩、砂糖などを大きな器に入れて長い棒で丹念にかき混ぜ、数週間熟成させるなど、昔ながらの工程に習熟していった。さらに「体質改善に役立つ酢の効能を広めたい」と思い立ち、気軽に飲める健康酢の開発を進めた。

 約30年前には、アカシアの花の蜜でしっとりとした甘さを添えた「長寿酢」を発売。トチュウの木をブレンドしてビタミンやミネラルを豊富に含ませた改良品「あかしや」も生み出した。

 引き合いが出てきた頃、阪神・淡路大震災が発生。小林さんの家が半壊したほか、小売店を切り盛りし、自慢の逸品を地域に広めてくれた知人も亡くなった。悲しみをこらえて醸造作業を続け、ロングセラーを育んできた。

 「出会いを大切にするのが信条。老若男女を問わず、たくさんの人と会話することが好き」と笑う小林さん。地道な醸造作業に励むだけでなく、配達では重さ10キロを超す商品ケースを運ぶ。今も販路開拓に奔走し、朗らかな性格で得意先を増やしている。淡路市のふるさと納税の返礼品にもなった。

 趣味で漢詩をたしなみ、風景写真を撮り、スマホやタブレット端末の操作にも挑戦。好奇心旺盛で壮健な姿は、自らも酢を飲む習慣のたまものだという。「ひらめき、感動、感謝を覚える日々。手作りの味と変わらぬぬくもりを末永くお客さんに届けたい」と夢を語った。

 「長寿酢」は1350円、「あかしや」は1500円で、いずれも税込み、容量は720ミリリットル。小林酢製造所TEL0799・86・0148

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