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能登の海岸を描いた代表作の前で、出版した版画集を持つ輔老さん=洲本市
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能登の海岸を描いた代表作の前で、出版した版画集を持つ輔老さん=洲本市

 教師と寺の住職を務めながら約50年間、木版画を創作してきた米寿の男性が画集を自費出版した。写実的な技法やカラフルな色彩に取り組み、いまでは、木々などの風景を白黒で表現する抽象的な作品がお気に入りという。約300点を収め、人生の節目に画境の変遷を振り返る納得の一冊となったが、「描(か)きたいものがあれば続ける」と話す。(中村有沙)

 兵庫県洲本市にある専称寺の前住職、輔老一完(すけたけいっかん)さん(88)。木版画を始めたのは、神戸市内の中学校で国語を教えていた30代。1970年の年賀状を木版画で制作してみようと、同市内であった講座に参加した。

 最初の作品は、戌(いぬ)年の年賀状だった。犬が2匹寝そべっているような絵を描いた。講座で手ほどきを受けながら作り上げた。「いま見ると拙い作品で笑ってしまう。それでも思い出深く、画集に入れた」

 欠かせない趣味になり、夜寝ないで作業することもしばしばだった。50代の86年に実家の専称寺を継ぎ、住職となってからも制作を続けた。「これまでに作った版画は数え切れない」と話す。

 画集は「木版画とわたしと2020」。A4判79ページ。代表作は、巻頭に載せた「風景・能登」だ。能登の海岸にあった朽ち果てた足場をモチーフにした大作だ。かつては漁師らが利用していたであろう足場が、砂浜にぽつんと残っている風景に、自らの心情を重ねた。あえて海や砂浜は描かず、印象的だった足場だけを白黒で表現した。

 初期のころは、陰影や薄い色を付けるなど「見たままの風景を写実的に捉えていた」という輔老さん。「徐々に無駄なものを省いて、自分の描きたいものだけを切り出すようになった」と振り返る。

 また、こいのぼりやひな人形を多色刷りでカラフルに描いた作品も多い。年をとるにつれ、民芸品のあたたかみにひかれるようになったという。

 木版画集は2008年以来2度目。米寿と、木版画を始めて50年の節目が重なった昨年、個展の開催と合わせて出版する予定だった。しかし、新型コロナウイルス禍で個展は延期に。画集の制作も伸び、今春ようやく完成した。

 輔老さんは「これまで生きてきた中で得た経験や感情が反映されている。88年間の人生が詰まった画集になった」と満足そう。200部印刷し、知人や友人らに配った。「一区切りとは考えていたが、ほめてもらって、うれしく、また描きたいものがあれば続けようと思う」と話している。

 約10部残っており、希望者があれば無料で贈呈する。寺での閲覧も対応する。

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