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「お客さんにも恵まれた」。常連客らと思い出を話す翁そば店主の竹本富枝さん(左)=神戸市中央区下山手通5
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「お客さんにも恵まれた」。常連客らと思い出を話す翁そば店主の竹本富枝さん(左)=神戸市中央区下山手通5

 神戸市中央区の兵庫県庁前で、半世紀近く営業を続けてきたそば店「翁(おきな)そば」が13日、のれんを下ろす。官公庁や周辺の病院、企業の従業員らに長年愛され、知事や県警本部長のほか、取調室に熱々の出前を届けたことも。退職後も通うファンも多く、阪神・淡路大震災による全壊被害も乗り越えたが、店主の竹本富枝さん(70)が閉店を決めた。富枝さんは「平凡なそば屋がこんなに続いたのは、お客さんのおかげ」と感謝する。

 富枝さんの夫幸生(ゆきお)さんの母春恵さんが1955(昭和30)年ごろ、同市兵庫区の新開地で創業。その後元町駅北に移転し、69年に県庁前にも出店した。

 飲食店が少なかった県庁前では出前の注文も多く、県警の留置場や企業の会議室、病院の医局などにできたての麺類やカツ丼など丼物を運んだ。富枝さんは「取り調べを受けていた男性にそばを持って行くと、『ここを出たらまた行くわ』と言われ、釈放後に来てくれたこともあった」と懐かしむ。

 91年に幸生さんが病死。元町駅北の店をたたんだ翌月には、震災で県庁前の店が全壊した。再開を目指す富枝さんを、常連客たちは「おかん、早くそば食べたいわ」と励まし続けた。10月に再開すると、店は花束で埋め尽くされた。

 30年以上通う女性(73)=神戸市兵庫区=は「ママに仕事の愚痴を聞いてもらったり、体調が優れないとメニューにない温かい大根煮を出してもらったりした」と閉店を惜しむ。

 客がくぐり続け擦り切れたのれんは20枚を超えた。神戸市外から通う常連客もいるが、富枝さんは「そろそろ潮時」と決心した。

 「旦那が死んで『のれんを守らないと』とやってきたが、自分でのれんを下ろすことができてうれしい」

 正午~午後5時。13日まで無休。(初鹿野俊)

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