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自作を展示する会場で、個展について話す新宮晋さん=兵庫県立美術館(撮影・斉藤雅志)
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自作を展示する会場で、個展について話す新宮晋さん=兵庫県立美術館(撮影・斉藤雅志)

 風や水の力で自在に動く彫刻を、半世紀にわたって制作してきた造形作家・新宮晋(すすむ)さん(79)=三田市=の個展「新宮晋の宇宙船」(神戸新聞社など主催)が兵庫県立美術館(神戸市中央区)で開かれている。ユニークな展覧会名は新宮さん自身が発案した。作品の洗練されたフォルムは未来的、SF的で、確かに「宇宙船」にも似ている。作家に個展や自作への思いを聞いた。(堀井正純)

 世界を舞台に活躍するベテランは今年80歳を迎える。代表作で仕事を振り返る形式の展覧会が多くなる年代だが、本展の出品作の大半は新作。「子どものころから手を動かすのが好きだった」と言い、衰えぬ旺盛な制作欲に驚かされる。創作は心躍る「遊び」なのだろう。少年のような好奇心も失わない。

 安藤忠雄設計の県立美術館の空間をどう生かすか知恵を絞った。「美術館と作品の100分の1の模型を作り、どう配置するか構想を練った」。全体のストーリーや変化を考え、照明にも細心の注意を払った。

 「基本的に壁と床を使わない展示を目指した」と言い、作品の大半は天井から吊(つる)すなど、宙に浮かぶ形で設置した。新宮アートの特徴の一つは「軽やかさ」。個展名の「宇宙船」について「無重力を感じてもらいたかった。宇宙空間のような現実の時間とは少し流れが違う、浮遊した時間を味わってほしい。床に寝転んで見上げるなど自由に鑑賞して」とアピールする。

 「星の海」「風」「雲の日記」「月の舟」など作品名も、宇宙や地球の自然をイメージさせるものが多い。「小さな惑星」と題したインスタレーション(空間芸術)は、闇の中、光が走りまさに宇宙空間を思わせる。「展覧会全体が『宇宙船』という一つの作品となるよう努力した」

 優雅に、軽やかに舞い踊り、目に見えぬ風や重力の存在を気付かせてくれる新宮アート。千変万化する動きを通じ、風や水、光、つまりは自然の魅力を人々に伝える。背後にあるのは、かけがえのない地球の環境を守り残したいとの願いだ。

 「人間はこの星を自分たちのものと勘違いしている。それはおごり、思い上がり。この宇宙船が(滅びを前にした)『ノアの箱舟』であってはいけない。地球の素晴らしさを自覚し、大切に思ってほしい」

   ◇

 本展には、遠縁の親類で、東京芸術大時代の恩師でもあった神戸ゆかりの画家・小磯良平氏(1903~88年)への思いもこもる。

 野外アート中心だったのを、室内向け作品に挑むきっかけを与えてくれた。テレビ番組で見た「超軽量室内飛行機」に感動した小磯氏が、新宮さんに「この飛行機も大馬力のジェット機も同じ原理で空気の中を飛んでいる」と説明。「一度考えてみたら?」との助言で、実際に室内用の軽量彫刻に取り組んだ。

 針金細工に紙を張った模型が、県立美術館の前身、県立近代美術館のスタッフの目に留まり、84年、同館での企画展「呼吸する彫刻たち」に結実する。

 その後も、関西国際空港の出発ロビーを彩る、凧(たこ)にも似た作品「はてしない空」など、わずかな空気の動きにも反応する室内アートを次々手掛け、反響を得た。

 小磯氏の代表作「斉唱」などが並ぶ県立美術館での展示に「うれしい。この展覧会を一番見てもらいたいのは小磯先生。作風はまったく違うが、私は先生の弟子に違いない」と顔をほころばす。

   ◇

 「新宮晋の宇宙船」展は5月7日まで。月曜休館。同館TEL078・262・0901

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