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ティントレット作「レダと白鳥」(左端)などが並ぶ会場。流麗な筆さばき、ダイナミックな構図が見事だ=神戸市立博物館(撮影・後藤亮平)
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ティントレット作「レダと白鳥」(左端)などが並ぶ会場。流麗な筆さばき、ダイナミックな構図が見事だ=神戸市立博物館(撮影・後藤亮平)
16世紀末の水都ベネチアの光景を描いた「サン・マルコ広場での聖十字架の行列」(手前)。少年使節も祝祭の行列を観覧した(撮影・後藤亮平)
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16世紀末の水都ベネチアの光景を描いた「サン・マルコ広場での聖十字架の行列」(手前)。少年使節も祝祭の行列を観覧した(撮影・後藤亮平)
ドメニコ・ティントレット「伊東マンショの肖像」(1585年、ミラノ、トリヴルツィオ財団蔵)。描いたのは巨匠ティントレットの息子ドメニコ
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ドメニコ・ティントレット「伊東マンショの肖像」(1585年、ミラノ、トリヴルツィオ財団蔵)。描いたのは巨匠ティントレットの息子ドメニコ
少年使節が拝謁した教皇を描いたシピオーネ・プルツォーネ「グレゴリウス13世の肖像」(1575年ごろ、フラスカーティ〈ローマ〉、ヴィッラ・ソラ・サレジオ会蔵)Istituto Salesiano “VillaSora″‐Frascati,foto di Paolo Violini
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少年使節が拝謁した教皇を描いたシピオーネ・プルツォーネ「グレゴリウス13世の肖像」(1575年ごろ、フラスカーティ〈ローマ〉、ヴィッラ・ソラ・サレジオ会蔵)Istituto Salesiano “VillaSora″‐Frascati,foto di Paolo Violini

 壮麗なルネサンス美術に初めて接した日本人はだれか? 安土桃山時代、ローマへと派遣された「天正遣欧(てんしょうけんおう)少年使節」の4人とされている。神戸市立博物館(同市中央区)で開催中の「遥(はる)かなるルネサンス」展(神戸新聞社など主催)は、伊東マンショら使節の約400年前の旅路をたどる企画展。ローマ教皇や各地の君主ら、少年たちが出会った人々の肖像画をはじめ、16世紀末のイタリアの美術・工芸品、書簡資料など約70件が並ぶ。(堀井正純)

 マンショ、千々石(ちぢわ)ミゲル、原マルチノ、中浦ジュリアンの4少年は1582(天正10)年、長崎を出帆。九州のキリシタン大名の名代として派遣された。発案者は当時日本でキリスト教布教に尽力したイエズス会士。主たる目的は、教皇やポルトガル・スペイン王に謁見(えっけん)し、日本での宣教への援助を求めることだった。

■熱狂的な歓迎

 使節団はローマのほか、フィレンツェ、ミラノ、ジェノバなど主要都市を歴訪。日本はマルコ・ポーロの「東方見聞録」で、黄金の国ジパングとして記述された例はあるものの、当時の欧州人にとっては未知の国だった。一行は各地で一大センセーションを巻き起こし、人々に日本と日本人の存在を印象づけた。

 記念メダルが制作されるなど訪問先で熱烈な歓迎を受けた。少年らの姿は絵画化され各国でニュースにもなった。着物と西洋の衣服が入り交じった奇妙な服装で描かれた報告書もある。

 水都ベネチアでは巨匠ティントレットの工房へ彼らの肖像画制作が依頼された。近年再発見された「伊東マンショの肖像」は、本展の注目作の一つ。マンショの凛々(りり)しい絵姿は少年というより、既に若き青年の趣きを帯びている。

■2人の教皇に謁見

 トスカーナ大公や、舞踏会でマンショと踊ったとの逸話が残るトスカーナ大公妃の肖像も並ぶ。肖像画の中で印象深いのは、教皇グレゴリウス13世。暦を現在も使われるグレゴリオ暦に改めたことでも知られるカトリック世界のトップだ。教皇に拝謁(はいえつ)した使節は、織田信長から贈られた屏風絵(びょうぶえ)「安土城之図」(現在は所在不明)も献上した。

 当時の欧州は、ルターらの宗教改革によってプロテスタントとローマ・カトリックが対立。日本からの使節団は、バチカンの威光が遥か東洋の島国にまで届いていることの証しとして、カトリック教会に利用された側面もある。グレゴリウス13世は少年使節との接見後まもなく逝去。マンショらは新教皇シクストゥス5世の戴冠(たいかん)式に参列するという栄誉にも浴した。

 使節団はバチカンで、天才ミケランジェロが手掛けた華麗な天井画も目にした可能性が高い。本展ではティントレットによる名画「レダと白鳥」などが、ルネサンス芸術の輝きを教えてくれる。ベネチアのサン・マルコ広場を描く油彩画も並ぶが、各都市の石造りの街並みや彫刻、公園の噴水などにも彼らは目を見張ったに違いない。

■苦難の後半生

 帰国後、少年使節は京都・聚楽第(じゅらくだい)で豊臣秀吉に謁見。ハープやリュートを奏で、西洋音楽も披露した。マンショらは活版印刷機、海図などさまざまな文物を持ち帰った。

 日本と西洋を結んだ最初の使節団として、キリスト教史だけでなく東西交流史上に偉大な足跡を刻んだ4人。しかしキリスト教弾圧の流れの中、厳しい後半生を過ごす。会場に並ぶ作品群や資料は、若き使節たちの「栄光の日々」の“証言者”でもある。

 7月17日まで。最終日を除く月曜休館。一般1300円、大学生900円、高校生700円、小・中学生500円。JR三ノ宮駅から徒歩約10分。同博物館TEL078・391・0035

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