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「ブータン」展に並ぶ多彩な仮面の数々=兵庫県立美術館(撮影・中西大二)
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「ブータン」展に並ぶ多彩な仮面の数々=兵庫県立美術館(撮影・中西大二)

 ヒマラヤ山脈南麓の“神秘の王国”ブータン。兵庫県立美術館(神戸市中央区)で開催中の特別展「ブータン」(神戸新聞社など主催)は、「幸せの国」として知られる王国の生活文化や宗教にスポットを当て、「本当の幸福とは何か」を考えさせられる。(堀井正純)

 ブータンは中国、インドという大国に挟まれた小国。九州に近い広さで、人口は神戸市の半分ほどの約75万人。「国民総幸福量」(GNH)を指標に、経済的発展ではなく心の豊かさを追求する国造りを進める。重視するのは、環境保護や伝統文化の振興だ。

 本展は、日本とブータンとの外交樹立30周年を記念した企画。ブータンの国立博物館や王立織物博物館などの所蔵品約140点を、「生活様式」「仏教と信仰」「王室」の3章構成で展示する。

■敬虔な仏教国

 入り口で目を驚かせるのは色鮮やかでエキゾチックな仮面の数々だ。ブータンはチベット系仏教を国教とする敬虔(けいけん)な仏教国。仮面は、民衆に仏法や高僧の逸話を分かりやすく伝えるため考案された聖なる踊り「チャム」で用いられる。人々は祭りで、動物や道化、仏教の聖人の仮面をつけ、カラフルな衣装をまとい、舞い踊る。

 仏教は7世紀にチベットから伝来し定着。国内には寺院や僧院が点在し、暮らしの中に仏教が息づく。人々は1日に平均1時間半、祈りをささげるという。

 祈りの対象は「タンカ」と呼ばれる仏画や仏像だ。鮮やかに彩色された「グル・ダクポ立像」は20世紀のブータン様式を代表する作品の一つ。「第二のブッダ」として崇敬されるチベット密教の祖、パドマサンバヴァが怒りの形相で現れた姿だ。両足で「欲」「怒り」を示す人物を踏みつけ、全身に力強さがみなぎるが、日本人にはどこかユーモラスにも感じられる。

 元は土着の神で、後に仏教の護法神となった「コンツェデモ」の座像など、日本ではなじみのない仏像も多い。仏画はインドの高僧ナーガルジュナ(龍樹)を描いたタンカなど、端正優美さに心癒やされる。

■多彩な織物工芸

 「生活様式」の章はブローチ、腕飾りといった装飾品や刀剣類、竹細工などの工芸品を紹介する。中でも多彩な織物は見ものだ。

 日本の着物に似た民族衣装「ゴ」や「キラ」は、腰機(こしばた)や高機(たかばた)で織られ、複雑華麗な幾何学文様などが見事。一点一点に、織り手たちの技と誇りが込められているのだろう。丹念な「手仕事の美」がずらり並び、見飽きない。ブータンでは、公の場での民族衣装の着用が定められており、伝統を守り伝えようとする姿勢が理解できる。

 「とはいえ、最近は多くの若者がスマートフォンに夢中で、現代化の波が押し寄せている」と本展を企画した西澤寛・東映シニアプロデューサーは現状を指摘。「それでも日本人が忘れかけたものが、ブータンには残っているのでは」と力を込める。足るを知ることや感謝の心…。経済的繁栄を追い求めてきた戦後日本が、この国から学ぶべきことは少なくないだろう。

 9月3日まで。月曜(7月17日を除く)と7月18日休館。一般1400円、大学生千円、70歳以上700円、高校生以下無料。阪神岩屋駅から徒歩約10分。ハローダイヤル050・5542・8600

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