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展示室内で公開制作する棚田さん(手前)とOさん
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展示室内で公開制作する棚田さん(手前)とOさん
ミステリアスな魅力を放つ棚田さんの木彫。彩色も特徴の一つだ
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ミステリアスな魅力を放つ棚田さんの木彫。彩色も特徴の一つだ
床に置いた絵の上に、彫像が並ぶ。絵と木彫が入り交じり、床も壁も一体となったような展示空間=いずれも伊丹市立美術館
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床に置いた絵の上に、彫像が並ぶ。絵と木彫が入り交じり、床も壁も一体となったような展示空間=いずれも伊丹市立美術館

 画家と彫刻家が分野を超えて競い合う「O JUN(おう・じゅん)×棚田康司(たなだこうじ) 鬩(せめぐ)」展(神戸新聞社など主催)が伊丹市立美術館(同市宮ノ前)で開かれている。「真剣勝負」「一騎打ち」がテーマで、2人が合宿で制作した新作を含む約150点を出展。絵と木彫はそれぞれが存在を主張しつつ、反発、共鳴、調和して、心惑わす不思議な空間を形作っている。(堀井正純)

 彫刻家の棚田康司さん(48)は明石市出身。古来の「一木造り」の技法で、不可思議で神秘的ともいえる少年や少女の木彫を制作してきた。対して、東京芸術大教授で画家のO JUNさん(60)は、日常の事物や人物、風景を多彩な画材で描き、絵画の可能性を探求するベテランだ。

■奇妙な楽園

 本展は、自画像や原風景が主題の「わたし×わたし」など3章で構成。2人が同じ女性モデルを基に競作した絵と木彫などが注目作だが、刺激的なのは、第2章「絵画×彫刻」の展示室だ。絵と木彫が重なり一体となって、日常のすぐ隣にありそうで、けれどどこにもない奇妙な“楽園”を形作る。部屋全体が一つの作品と言っていい。

 床に広がるのは、日本地図をモチーフにした、Oさんの「沿岸図」(10枚組)。その作品の上に、棚田さんによる少女らの胸像が載る型破りの展示に驚く。壁面を埋めるのは、Oさんが描いた、落下したり、仁王立ちしたり、裸で駆け出したりする少女らの絵画群。記号やデザインを思わせる図柄の絵もあり、その壁のそこかしこにも棚田さんの彫像が“侵入”している。

 同館の岡本梓学芸員は「通常は絵は壁に、彫刻は床に置かれるが、絵と彫刻が境界を超え、交わることを試した」と説明する。

 ともに少年や子どもを好んで題材にするが、多くの作品が放つのは、若さの輝きというより、不安や孤独、得体のしれない何かだ。空間全体は一見明るく、ポップな印象を受ける。余白が多くカラフルなOさんの絵の影響だろう。だが意味があるようで、ないようで、捉えどころがなく、戸惑う。イタリアの巨匠ジョルジョ・デ・キリコが描く、白昼夢の世界に迷い込んだような気分とでもいえようか。

■公開制作

 会期中、2人が同じ展示室内で、随時公開制作するのも話題だ。共通テーマは「現在の自分」で、自画像、自刻像を競作する。

 「一人で制作するより、他者が入ってきた方が刺激され、予測不可能なものが出てくるのでは。新しい化学反応が起こることに期待している」と岡本学芸員。

 背中合わせの制作で、互いを意識せざるをえないが、棚田さんは「最後は自分自身とのせめぎ合いになる」と創作の本質を語る。

 会場で制作風景に見入っていた主婦岩井聖美さん(31)=高槻市=は「2人のパワーがぶつかり合っている感じで、緊張感が伝わってきた。絵画は線を加えていくプラスの作業、木彫は木を削っていくマイナスの作業で、その対比が面白い」と満足げだった。

 8月27日まで。7月17日を除く月曜と同18日休館。一般800円、高校・大学生450円、小・中学生150円。JR伊丹駅から徒歩約6分。同館TEL072・772・7447

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