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水原弘二さんが熟練のこてさばきで焼きあげたねぎ焼き(右)など、こなもん全般との相性抜群で人気の黄色いジュース「アップル」やラムネ=神戸市長田区久保町4(撮影・大森 武)
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水原弘二さんが熟練のこてさばきで焼きあげたねぎ焼き(右)など、こなもん全般との相性抜群で人気の黄色いジュース「アップル」やラムネ=神戸市長田区久保町4(撮影・大森 武)

 神戸市長田区のJR新長田駅周辺には、およそ60ものお好み焼き店がひしめく。「店の集積率全国一」ともいわれるこの町で、屈指の老舗が「お好み焼き みずはら」。創業84年を迎える伝統の店で、3代目店主水原弘二さん(60)に「長田のこなもん」について聞いた。

 JR新長田駅から南へ徒歩約10分。店は鉄板1枚を囲んで7人で満杯になる。

 「店はうちのおばあちゃんが昭和8(1933)年、大正筋商店街にあった映画館の裏で始めたんや。そこには5軒並んでて、お好み焼きは1枚1銭やった。新聞紙にソース塗って、焼けたやつをそれで巻いて『はい』って渡す。いまでも、『新聞のインクの香りが良かった』と話すお客さんがおるで」

 創業当時からの味を受け継ぐ「ねぎすじ焼」(700円)を注文した。水原さんが、小麦粉を水で溶いた生地を鉄板で伸ばす。ジュー。音が店内に響き渡る。そこにねぎ、牛すじ、天かす、カツオ粉を乗せ、また生地をかけてひっくり返した。あれっ。具材と生地はあらかじめ混ぜないの? 広島焼みたいですね。

 「なに言うとんねん。これがもともと、長田の焼き方や。おばあちゃんが始めたとき、周りの店はもっとベテランばっかりやった。その焼き方を見よう見まねでまねしたんよ。せやから、長田ではみんなこうやって焼いてたんやろ」

 水原さんは、鉄板の上でねぎすじ焼をこてで何度か押さえ、しばし待った。それから2度返して出来上がり。何もかけずに口に入れる。外側はカリッとしていて、中からしょうゆ味の牛すじの味が広がった。

 「ソースかけてもいけるで。うちのは住吉の宝ソース(神戸宝ソース)や。しょうゆでもいける。ただ、マヨネーズは置かへんねん。たまに『ちょうだい』いう人おるけどね。『うちは置いてない』と。『お前はヘンコツや』て言われんねんけど」

 話を聞いた8月23日は地蔵盆。店に面した道路の向かいでは、地蔵を囲んで提灯の飾り付けをする人たちがいた。水原さんも幼いころに地蔵盆、行きました?

 「大正筋商店街辺りによう行ったなあ。そりゃ、楽しみやったよ。風呂上がったら、おばあちゃんに線香の束を渡されて、あせもの白い薬を塗ってな。『あそこ行ったらラムネ飲める』いうて、友だち同士で情報交換して。70も80も地蔵回ったよ。金魚の形したお菓子をもらうんが定番やった。懐かしいな。でも震災後に地蔵がごっつぅ減って、いまはもう三分の一しかなくなったなあ」

 ねぎすじ焼に、そばめし(800円)も食べ、満腹に。下町のお好み焼き店では定番の甘酸っぱいジュース「アップル」(100円)で締める。口の中も、気分も爽やかになった。

 ごちそうさまでした。(聞き手・上田勇紀)

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