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祇園の老舗菓子舗「鍵善良房」が所蔵する「赤漆流稜文飾手筐」(1955~60年)。黒田は「おまえは、何になりたい?」と素材と対話しながら木を削り彫り漆を塗り貝を貼ったという
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祇園の老舗菓子舗「鍵善良房」が所蔵する「赤漆流稜文飾手筐」(1955~60年)。黒田は「おまえは、何になりたい?」と素材と対話しながら木を削り彫り漆を塗り貝を貼ったという
きらびやかで精緻な「乾漆耀貝螺鈿飾筐」(1972年、個人蔵)
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きらびやかで精緻な「乾漆耀貝螺鈿飾筐」(1972年、個人蔵)

 木工芸で初の重要無形文化財保持者(人間国宝)となった漆芸家・木工家の黒田辰秋(1904~82年)の人と作品を振り返る「京の至宝 黒田辰秋展」が京都市下京区の美術館「えき」KYOTOで開かれている。生誕地京都では初となる回顧展で、初期から晩年までの約90点を出展。洗練された造形美、熟練の技が光る。(堀井正純)

 京都・祇園の塗師(ぬし)の家に生まれた。当時の漆芸は、ろくろで木から椀(わん)や盆を挽(ひ)く木地師(きじし)、漆を塗る塗師、金銀や螺鈿(らでん)で装飾する蒔絵師(まきえし)による分業制。だが黒田は、素地作りから仕上げまでを自ら手掛ける一貫制作を志し、腕を磨いた。素材と対話しながら制作。非凡なデザイナーの才と、卓越した職人技を併せ持ち、「古今を貫く名工」と呼ばれるまでになった。

 絶対的な「美」を終生、追い求めた。「最も美しい線は削り進んでいく間に一度しか訪れない」。そんな厳しい言葉を残している。

 会場で目を引くのは、「乾漆耀貝(かんしつようがい)螺鈿飾筐(かざりばこ)」など、メキシコ産アワビ貝(耀貝)を用いた華麗な螺鈿細工の数々だろう。だが、黒田の美意識が集約されているのは、むしろシンプルな「朱漆(しゅうるし)」の造形ではないか。「金鎌倉四稜捻茶器(きんかまくらよんりょうひねりちゃき)」「赤漆捻紋蓋物(あかうるしひねりもんふたもの)」といった作品の、つややかな朱の輝き、流れるような曲線美に息をのむ。思わずなでさすりたくなるほどだ。彼は、螺旋(らせん)や渦など自然界のリズムや運動を単純化し、美へと昇華させた。古典的な美とモダンさ、「静」と「動」が不思議に同居している。

 とりわけ、四角い箱の表面に、螺旋文様を施した「赤漆流稜文飾手筺(りゅうりょうもんかざりてばこ)」が秀逸。直線的な箱に本来、円を描く螺旋の流麗優美なカーブを融合させ、見事というほかない。その下絵も並び、見比べると面白い。

 本展では、若き日に影響を受けた陶芸家河井寛次郎や、民芸運動の指導者柳宗悦(むねよし)との出会いについても解説。祇園の菓子舗「鍵善良房(かぎぜんよしふさ)」の店主など、黒田を支え育てた京都の注文主たちとの交流にもスポットを当てる。

 黒田は、随筆家白洲正子や作家川端康成、志賀直哉ら、多くの著名人や目利きたちに愛された。会場には、映画監督黒澤明からの注文で制作した重厚な拭漆(ふきうるし)の椅子も展示されている。

 10月9日まで。会期中無休。一般900円。同館TEL075・352・1111(大代表)

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