戦時中に旧日本軍が拿捕 外国船270隻の実態明らかに 神戸の男性が歴史や写真まとめ出版

2022/08/16 09:54

「外国籍拿捕船要覧」を出版した宮田幸彦さん=神戸市垂水区

 神戸市垂水区の宮田幸彦さん(89)が、戦時中に旧日本軍が拿捕(だほ)した外国船約270隻の歴史やトン数、写真などをまとめた書籍「外国籍拿捕船要覧」を出版した。拿捕された船の乗組員の中には、同じ船で雇われ続けた結果、空爆などで亡くなった人も多かったとされるが、実態の記録はほとんどなかった。調査を通じ、宮田さんは「さまざまな人を不幸にする戦争は二度と繰り返してはいけない」と訴える。 関連ニュース 秋の鹿児島国体8位入賞へ結束 各競技団体が決意表明 県スポーツ協会「プロジェクト1会議」 県職員の管理職手当カット長期化「見直しを」 ふるさと納税や外郭団体でも提言 県公館で県政改革審 DVは「労働問題」という認識持って 神戸のNPO法人が講演 被害者に有給休暇を保障、諸外国で法整備の動きも


 旧日本軍は太平洋戦争開戦に伴い、中国沿岸や東南アジアなどで数多くの貨物船や客船などを拿捕した。宮田さんの兄、晋さんは貨物船「香澄(かすみ)丸」の乗組員だったが、終戦直後、栄養不良により死去。生前の兄を知るため、当時は情報が乏しかった香澄丸について、宮田さんは文献を調べ始めた。かつてイギリス船籍だったことや、開戦後に日本側が拿捕して貨物船として運航したこと、1945年5月に関門海峡付近で機雷により沈没したことが確認できた。
 宮田さんは戦後、神戸市内の工場で船のエンジン修理などを50年以上手がけてきたが、退職と前後して1993年ごろから、ほかの拿捕船についても本格的に調査を開始。主に県内外の図書館の資料を基に、船ごとに船名の変遷や主な出来事を写真とともに収録し、参考にした書籍名なども記して冊子にした。
 「拿捕船についての資料はこれまで少なかったため、親族が拿捕船で亡くなった人などから喜ばれている」と宮田さん。今後は、趣味で描いている拿捕船の絵を画集にまとめるのが目標だ。
 「外国籍拿捕船要覧」は2015年と20年に計100冊出版し、兵庫県立図書館や神戸市立中央図書館で読むことができる。(井原尚基)

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