どん底味わった世界的ピアニスト 超絶技巧のピアノ曲を芸文センター管弦楽団と共演 18~20日
2022/11/09 10:11
ピアニスト三浦謙司(C)Jeremy Knowles
ロン・ティボー・クレスパン国際音楽コンクールに優勝し、世界から注目を集めるピアニスト三浦謙司(29)=神戸市垂水区出身=が18~20日、兵庫県西宮市の県立芸術文化センターで、兵庫芸術文化センター管弦楽団(PAC)と初共演する。ロマンにあふれ、超絶技巧作品としても知られるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を奏でる。(網 麻子)
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初めてこの曲に取り組み「人間としての証しが音楽になったようで、ピアノ協奏曲の中で一番好き。自分の持つ全てを応用し、壮大さと向き合いたい」と意気込む。
三浦は塩屋小学校に通い、地元のピアノ講師・広中節子に師事した。小学4年を終えた時、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイへ移り、13歳で英国に留学、ベルリン芸術大に進んだ。しかし、音楽だけの人生に疑問を感じ、19歳で中退、帰国した。
親は海外におり、パチンコ店や引っ越し業者、工場などで働きながら、1人で暮らした。ピアノは一切触らなかった。1年数カ月後、「孤独で、お金もなく、英国の親しい友人を亡くし、全てがどん底になった」。
そして、音楽の世界に戻ることを決めた。「持ち物も、命ですらいつなくなってもおかしくない。だが、たとえ耳が聞こえなくなっても、自分の中で音楽は流れている。唯一、誰にも奪われないのは音楽だと分かった」
2014年、ドイツのハンス・アイスラー音楽大に入学、その後大学院に進んだ。「コンサートでは、会場の空気を感じ、応用して演奏できるようになった。作品に込められた作曲家の経験を読む力がなければ、本当の演奏はできない」と話す。さまざまなコンクールで優勝するなどし、演奏活動に取り組む。
コロナ禍のためコンサートができなくなった時期、その意味について考え抜き、理解した。「作品がコンサートを必要としている。作品に命を与えるため、やる必要がある。その日の観客、響き、その瞬間しか生まれないものがある」
兵庫での演奏に心がはずむ。「地元で弾けるのはうれしい。神戸は日本で一番好きだし、関係を大切にしていきたい」
演奏会は、シンガポール出身のカーチュン・ウォンが指揮。PACは他に伊福部昭の舞踊曲「サロメ」より「7つのヴェールの踊り」、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」を披露する。
いずれも午後3時開演。A席4千円、B席3千円。芸術文化センターチケットオフィスTEL0798・68・0255