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関西学院大生の竹田未来さんと一緒に給仕する井澤恭子さん(右から2人目)=西宮市津門綾羽町(撮影・風斗雅博)
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関西学院大生の竹田未来さんと一緒に給仕する井澤恭子さん(右から2人目)=西宮市津門綾羽町(撮影・風斗雅博)
客が食事後に寄せたメッセージ。おばあちゃんの絵を描いた子どもも(撮影・風斗雅博)=西宮市津門綾羽町(撮影・風斗雅博)
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客が食事後に寄せたメッセージ。おばあちゃんの絵を描いた子どもも(撮影・風斗雅博)=西宮市津門綾羽町(撮影・風斗雅博)
店の外で“看板娘”になっていた前田民子さん(中央)と談笑する、関西学院大大学院生の森美月さん(左)=西宮市津門綾羽町(撮影・風斗雅博)
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店の外で“看板娘”になっていた前田民子さん(中央)と談笑する、関西学院大大学院生の森美月さん(左)=西宮市津門綾羽町(撮影・風斗雅博)

 加齢や認知症の発症で、自信を失う高齢者が少なくない。そんなお年寄りと若者が共に働き、楽しめる場をつくれないか-。関西学院大大学院人間福祉研究科の森美月さん(23)を中心に、兵庫県西宮市のレストランで今月、高齢者と関学大生が接客する一日限りの「ちょいまちイタリアン」が開かれた。注文を聞き間違っても頓着しない。目を輝かせる大学生と、緊張と不安が入り交じる高齢者。さあ、どうなるのだろう?(中川 恵)

 ◆午前9時

 今月9日、西宮市津門綾羽町のイタリアンレストラン「るこら・るっこら」。学生7人が準備を始めた。メディアや哲学など福祉と縁遠い専攻の学生もいて、認知症サポーター養成講座を受講した。3年竹田未来さん(20)は「関わり方を学んだ。交流が楽しみ」と話す。

 店のオーナー田中忠雄さん(51)は森さんの思いに賛同した。「お客さんが何かを感じてくれたら」と話し、調理場へ向かう。

 給仕をする高齢者は5人。市内のデイサービスセンター「にしのみや苑」などを利用する人らが午前と午後に分かれた。「緊張する」と顔をこわばらせる人に、中西すみ子さん(69)が「お客さんは間違えることを期待してる。肩の力を抜いて行きましょ」。張り詰めた空気が少し緩んだ。

 ◆午前10時50分

 店の外に人だかりができ、予定より10分早く開店。約40平方メートルのこぢんまりした店は人であふれた。

 メニューはサラダ、パン、パスタ、デザートのセットで、パスタは3種類、飲み物は6種類から選ぶ。水を運び、注文を聞いて調理場に伝え、料理を運ぶ中西さんら。四つのテーブルはややこしいことに相席だ。

 「(テーブル番号)1番と2番のパスタです」。調理場の声に、中西さんが反応する。皿を手に動き出すも、はたと立ち止まる。「1番の席はどこ?」。学生と客が「こっちです」と声を掛ける。別の女性はテーブルまで行ったものの、手にしたパスタを誰に渡すかが分からない。とっさに「これ、何やろね?」と声を上げた。学生がそっと耳打ち。「おいしそう」。受け取る客の顔がほころんだ。

 「疲れたな」。高齢者から声が上がる。にしのみや苑の援助員森田佐恵子さん(44)は「普段の生活にない緊張感。すごく気を遣っている」と話す。一方、店の外では、休憩中に入店待ちの人と戦時中の生活や嫁しゅうとめ問題などを語り、“看板娘”になる高齢女性が次々に現れた。

 ◆午後1時

 午前の「勤務」を終えた梨田静子さん(87)と入れ替わるように、長女の堀越千歳さん(60)が客として入店。満席で、外から母の働きぶりを見守っていた。

 島根県浜田市で洋装店を営んでいた梨田さんは、10年ほど前に店をたたみ、西宮へ来た。働きたい気持ちが強く、デイサービスに行くと、娯楽より洗濯物をたたむような用事を好む。堀越さんは「母は生き生きしていた。昔のようにはできないけれど、うれしかったと思う」と喜んだ。

 ◆午後3時

 最後の客を見送った。訪れた客は全部で54人。食材が途中で切れ、学生が買い出しに走る一幕もあった。

 中西さんは、ほぼ休憩を取ることなく働き続けた。学生からお礼を言われると「1人でやってた? 忘れたわ」とあっさり。でも「楽しかった。多少なりとも役に立つのがうれしい」と満足そうだ。

 一緒に給仕した3年小林宮瑠美さん(20)は「皆さん、できているのに謙遜しがち。それって、社会が人を『役に立つかどうか』で見ているからじゃないか」と振り返った。

 周りが受け入れれば、少しくらい間違えたって、待たせたっていい。「ちょいまちイタリアン」。店内で広がった笑顔が、そう教えてくれた。

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