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新作の絵本の原画などを手にする更家なおこさん(左)とにきまゆさん=芦屋市
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新作の絵本の原画などを手にする更家なおこさん(左)とにきまゆさん=芦屋市

 兵庫県芦屋市在住の絵本作家が、東日本大震災での支援活動をもとにした絵本の制作に励んでいる。同市に住む更家なおこさんは、震災直後から被災地の宮城県や福島県で絵本の読み語りなどを続けてきた。手掛ける絵本には「被災者の生きる力強さ」を落とし込んだといい「作品を通じて被災地での経験を語り継いでいきたい」と話している。(風斗雅博)

 更家さんは岡山県出身。大阪市内にある専門学校の絵本コースで講師を務めた後、NTTの関連会社に入社。関係各社の研修プログラムを立案、指導する立場として、東北各県に出向くことも多かった。

 阪神・淡路大震災は大阪府豊中市で経験した。自宅は被害を免れたが、西宮や尼崎に住む知人から苦境を聞き、芦屋市に出向いて惨状を目の当たりにした。「近くにいるのに何もできない歯がゆさを感じた」

 そうした思いから、11年の東日本大震災では、発生1週間後に絵本を使った支援活動を決めた。全国から寄贈を受けた絵本を手に、宮城県や福島県の避難所などで読み語りのワークショップを開いた。

 参加者はほとんどが60代以上の高齢者。読み終えると「震災があってから初めてほっとした」などと声が上がった。感想とともに被災体験を語りだす人もいた。その変わりぶりを見て「まずは大人の心のケアが大事だ」と気付いたという。

 その夏から絵本作家のにきまゆさん(38)=大阪府茨木市=と共同で絵本「道しるべ」の制作を始めた。喪失感を抱えた主人公のクマがもう1人の自分「ラインくん」に導かれて自分自身を取り戻していく物語。支援先で出会った被災者の姿をモデルにした。

 翌年春、福島県南相馬市にある仮設住宅を訪れ、住民に「道しるべ」の試作版を手渡した。その中に、無表情で絵本を見つめる高齢の男性がいた。主人公が奇妙な音から逃れようと暗い階段を駆け上がるページで手は止まっていた。「わしはこの先を知っている」。そうつぶやいた男性は、徐々に被災経験を語りだした。身内が10人以上亡くなったこと。がれきの中から娘の腕を見つけ出し、掘り起こして遺体安置所へ運んだこと。衝撃的な内容にもかかわらず、全てを吐露した男性にはその後、笑顔が戻ったという。

 「つらい経験をしてきた人たちのさまざまな感情を引き出す力が絵本にはあると確信した」と更家さん。3年前には絵本を使った大人の居場所づくりやその担い手を育成するため、任意団体「絵本道」を立ち上げた。全国各地で「道しるべ」を使った読み語りや原画展を開き、被災者の経験や思いを語り継いでいる。

 東日本大震災の発生から来年で10年となる。被災地で交流を重ねるうちに気付いたのは、住み慣れた土地や自然への強い思いだ。にきまゆさんと再びタッグを組んで制作する新作絵本には、前作のキャラクターとともに「被災者を再び立ち上がらせた原動力」として森や水辺、動物が登場するシーンを織り交ぜた。更家さんは「被災地の住民と出会わなければこの作品はできなかった。心のよりどころとなれるような絵本にしたい」と話している。

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