阪神

  • 印刷
タブレット端末で新型コロナウイルスの患者と面談する精神科医ら=尼崎市東難波町2、県立尼崎総合医療センター(同センター提供)
拡大
タブレット端末で新型コロナウイルスの患者と面談する精神科医ら=尼崎市東難波町2、県立尼崎総合医療センター(同センター提供)
オンラインでヨガ療法に取り組む妊婦を見守る田口奈緒産婦人科部長=県立尼崎総合医療センター
拡大
オンラインでヨガ療法に取り組む妊婦を見守る田口奈緒産婦人科部長=県立尼崎総合医療センター

 新型コロナウイルス感染症の「第1波」が押し寄せる最中、患者を受け入れる感染症指定医療機関では、入院患者らの心理的なケアが大きな課題として浮上していた。患者たちが知らぬ間に抱く孤立感やストレスの負担をいかに軽くできるか-。兵庫県立尼崎総合医療センター(尼崎市東難波町2)は、オンラインで病院内をつなぐビデオ会議システムを積極的に活用。精神科医らでつくった専門チームが患者の孤独に寄り添ったり、妊婦を対象にヨガ療法を取り入れたりしている。「1人じゃない、と伝えたい」。新しい模索が始まっていた。(大田将之)

■オンライン活用 院内感染拡大も予防

 ビデオ通話アプリ「フェイスタイム」を通じて患者に語り掛ける。

 「みんなでサポートするので、何でも話してくださいね」

 県立尼崎総合医療センターにできた「リエゾン・チーム」。精神科医や臨床心理士、精神保健福祉士、看護師らがチームを組み、患者の心理的ケアを一手に引き受ける。画面を囲むメンバーが一言ずつ自己紹介する。精神科の石橋直木医長は「隔離された環境下で、孤立感を抱く患者は多い。まずは『1人じゃないよ』ということを伝えたい」と話す。

 感染症指定医療機関の同センターは、3月1日から新型コロナ患者を受け入れた。延べ約140人が入院し、ピークの4月中旬には34人が隔離病棟に入った。

 石橋医長によると、感染力が強く、治療法も確立されていない新型コロナ患者は、精神面の不調が起きやすく、自責感や罪悪感を抱く傾向があるという。

 「大切な人にうつしてしまっていたら」「元の仕事に戻れるか」「退院後も周囲から避けられるのでは」

 同センターでも、不眠や抑うつ状態になる患者が少なくない。口では「大丈夫」と話していても隔離生活が長引くと、無意識にストレスを積み重ねるケースもみられる。

 ビデオ通話での面談は1日に3~5人程度。「気になることはありますか」と尋ね、睡眠状況や食欲などを聞き取る。患者の精神状態を主治医や看護師らと共有し、必要に応じて薬も処方する。

 回復するに連れて精神面も安定してくるといい、石橋医長は「新型コロナの治療に集中できるように、精神面の負担を少しでも軽くできれば」と力を込める。

 オンラインでの面談は、同センター精神科では初めての取り組みだ。画面越しのやり取りは、目線が合いづらかったり、声が聞こえにくかったりと、難しさもある。ただ、主治医からの伝聞やナースコールでの診察に比べると「はるかに有効」と石橋医長。院内感染の予防にもなる。

 コロナ禍を機としたオンライン診療だが、石橋医長は「緊急事態においては今後、直接面接の代替手段として広がっていくのでは」と予測。「私たちの取り組みも、先行事例として積極的に発信していきたい」と語った。

■妊婦にヨガ 体動かし表情も晴れ

 タブレット端末の画面には、ヨガ講師とともに、おなかの大きな妊婦の姿。講師の合図に合わせて深く息を吸い、腰をひねったり、脚を伸ばしたり、目を閉じて瞑想(めいそう)したり。1時間ほどのプログラムを終えて爽やかにほほ笑む妊婦を、県立尼崎総合医療センター産婦人科の田口奈緒部長が画面越しに見守る。

 同センターでは、妊婦の新型コロナ患者らに心と体を癒やしてもらおうと、ヨガやアートに取り組んでもらっている。産婦人科や小児科の患者を対象とするトラウマ(心的外傷)に配慮したケアの調査研究事業として取り入れてきたプログラムだが、コロナ禍で講師を招けなくなり、4月からオンラインに切り替えた。

 参加した妊婦6人のうち2人が新型コロナウイルスの感染者だった。画面の前で黙々と体を動かしていると表情は柔らかくなり、講師との何気ない会話もはずむ。隔離病棟で働く医師や看護師が息抜きで参加することもある。

 同センターでは、妊婦の新型コロナ患者はシャワーやトイレ付きの個室に入る。4月1日から20日まで同センターに入院していた妊婦はヨガ後、「自分でも驚くほど気分が晴れる」と笑顔を浮かべ「隔離された個室で過ごしているだけで、いつの間にかストレスがたまっていたんだと気が付いた」と話した。

 「症状が軽くても、おなかに赤ちゃんがいる状態で感染病棟にいるだけで神経質になり、感染した自分を責めてしまう。医療スタッフでない外部の人と接し、他愛のない話ができるだけでも心が落ち着く」と田口部長。プログラムの前後に、気分状態を調べる心理検査「POMS2」を受けてもらうと、6人とも改善したという。

 調査研究事業の一環として無料で提供しているが、事業は今年9月で終了するため、継続の方法を模索している。

 田口部長は「新型コロナの感染もトラウマになりかねない」とし「大きい病院はスタッフも忙しそうにしていて、患者はなかなか胸の内を言い出しにくい。高度な治療に加え、一人一人の患者に寄り添ったケアもできる体制を整えていきたい」と話す。

阪神の最新
もっと見る

天気(8月12日)

  • 33℃
  • 28℃
  • 30%

  • 35℃
  • 25℃
  • 40%

  • 35℃
  • 28℃
  • 20%

  • 36℃
  • 27℃
  • 40%

お知らせ