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「あんぱん送ります」のツイート画面
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「あんぱん送ります」のツイート画面
ツイートした新里幸恵さん=川西市清和台西1
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ツイートした新里幸恵さん=川西市清和台西1
パン工房カザン・ヴォのあんぱん
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パン工房カザン・ヴォのあんぱん

 「#死にたい と思っている方へ (中略)あんぱん送ります。むっちゃ、美味しいので!! 食べてからでも遅くないでしょ?」

 短文投稿サイト「ツイッター」に9月22日、こんな文章とともに、あんがぎっしり詰まったあんぱんの写真が投稿された。書いたのは兵庫県川西市清和台西1の「パン工房カザン・ヴォ(樺櫕房)」。一体どうしてこんな投稿をしたのだろう。(中川 恵)

 同店は2002年、パン屋で働いていた新里博志さん(58)が独立して開いた。店名は音の響きで決めたが、漢字には「パンの最高の焼き色」「人を引きつける」「専門のものを作り出す場所」の意味がそれぞれ込められているという。

 ツイッターに投稿したのは店を共に切り盛りする妻の幸恵さん(48)。「おいしい、楽しい」パン屋を目指し、店内に観葉植物を飾ったり、飽きないよう日替わりパンを用意したりする。ツイッターは昨夏から始め、いつもはお薦めのパンやそのときに思いついた文章を投稿している。

 「8月に全国で自殺した人は1849人」-。幸恵さんは新聞で小さく報じられたこの数字に驚いた。「たった1カ月でこんなに亡くなっているのか」。試しにツイッターで「#死にたい」と検索すると、たくさんの投稿が目に入った。

 さらに子育て中の親のしんどさも目にとまった。「いい親」でいようと頑張るあまり「どうして私ばっかり」と不満が募り、子どもやパートナーに一層いらいらし、孤独になっている姿に、自分が重なった。

 幸恵さんにも3人の子どもがいる。元々マイナス思考に陥りがちだったが、結婚、子育てで不平不満が募ったという。今は、心理カウンセラーの言葉などから「よりよく生きようとせず、より自分らしく生きよう」と思うように。周りもだめ出しするのではなく、すてきなところを褒めていけば暮らしやすくなるのではと考え、実践しようとしているという。

 「何か思い詰めているときでも、視点が変われば気持ちが楽になるかもしれない」。思いつきで、店のあんぱんの写真を撮った。あんぱんを選んだのは、店の人気商品であり、身近で誰もが味を知っているから。何より、画面にあんぱんの写真が出てきたらインパクトがあると思ったから。「送ります」にしたのは、届くのを待つ間は思いとどまってくれると信じたから。

 深刻に悩んでいる人をちゃかしていないか、不快に思う人がいるのではないか-。投稿してからも悩んだが、1人からダイレクトメールが届き、実際にあんぱんを送った。今はこの取り組みをしていないが、幸恵さんは「根拠のある支援じゃないから、本当はしない方が良かったのかもしれないけれど、気になってしまって。ただの『おせっかいおばさん』です」と話す。そして「できないことを数えて自分を責めるのではなく、できたことを見つめて自分に甘く生きてほしい」と願った。

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