経験共有し前を向く糧に 乳がん患者の支援団体代表
2020/12/13 05:30
渡辺愛さん
■渡辺愛さん(兵庫県尼崎市)
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「一人ぼっちじゃない」「悲観せず今を生きよう」。乳がん経験者からの力強いエールがつづられる。写真共有アプリ「インスタグラム」に立ち上げたアカウント。今年6月、会員制交流サイト(SNS)で全国の当事者にその経験や思いを問うアンケートを始めた。回答者は5カ月で150人に上り、その声を一つ一つ丁寧に発信する。「乳がんを宣告された人が前を向くきっかけになれば」
尼崎市立花町で生まれ育った。大学卒業後はデザイン事務所や生活雑貨店などで働き、26歳で結婚。その後、31歳までに3人の子どもに恵まれた。
乳がんが発覚したのは2年前。無意識に脇を手で押さえる癖に娘が気付き、検査をした。すると胸には2センチ台の腫瘍が。翌週、医師から正式に宣告を受けた。「体は元気なのに」。インターネットで調べても不安は募るばかり。「何が悪かったのか」と自分を責めた。
その後、左胸は切除し、現在も注射や飲み薬の投与を続ける。そうした経験を友人らとの食事会で話すと、「当事者が打ち明けてくれると質問しやすい」と反響があった。「自分も本当に知りたかったのは経験者の実体験だった」。その輪を広げようと、乳がん経験者の支援団体「Reborn.R(リボンアール)」を友人と2人で立ち上げた。
10月には手術痕を気にして公衆浴場を敬遠する人らを応援するイベントを企画。ロビーで体験談などを語り合い、浴場では打ち解けた参加者たちが仲良く湯船につかった。その光景を見て「会議室ではなく、お風呂だからこそ身構えない雰囲気が作れた」と喜びに浸った。
最近は胸パッドや入浴着のデザインなど具体的なニーズも把握できるようになり「今後は商品開発にも取り組みたい」と意欲的だ。「つながりを求めている経験者同士を結びつける。そんな場を作っていきたい」。48歳。(風斗雅博)
【メモ】胸の手術3日前には後輩のカメラマンに依頼して「ブレストフォト」を撮影。その経験は今も「心の支え」と話す。アンケートはインスタグラムなどから受け付けている。回答者が千人に達したら、本にまとめて出版する予定。