パートナーシップ制度、導入進むも… 市町間に壁
2021/03/25 05:30
尼崎市から交付されたパートナーシップ宣誓書受領証を手にする男性=尼崎市内
同性カップルらを婚姻に相当する関係と認め、自治体独自に証明書を発行する「パートナーシップ制度」の導入が阪神間で広がり、4月には兵庫県三田市を含む全8市町で制度が整うことになる。人口175万人を超える隣接自治体がまとまって導入するのは全国でも珍しい。しかし、国が認める「結婚」ではない以上、市町間の壁は厳然とあるのが現実だ。なんとかならないのだろうか。
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阪神間では宝塚市が2016年6月、全国で4番目に導入した。これ以降、三田、尼崎、芦屋、伊丹、川西市が続いた。西宮市と猪名川町はこのほど4月に導入することが決まった。
カップルは各市町発行の「宣誓書受領証」を提示すると、婚姻関係や事実婚と同様に市営住宅に申し込めるほか、新婚世帯向けの転入補助金を受けたり、パートナーが犯罪被害に遭った場合は「遺族」として扱われたりする。
ところが、各自治体のパートナーシップ宣誓には「条件」が付いている。例えば西宮市。
「一方または双方が市内在住か市内に転入予定があること」
西宮市と他の自治体に住む2人が西宮市で宣誓し、別の自治体の市営住宅に申し込もうとした場合、受領証は効力を発揮しない可能性がある。
「自治体ごとに提供サービスや(宣誓の)要件が違うので…」と西宮市の担当者は言葉を濁す。市町ごとに設けた制度の限界だ。
今月17日、同性同士の結婚を認めない民法などの規定は憲法違反として、3組の同性カップルが国に損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁が違憲と認める判決を出した。請求は棄却したが、現在の状況は憲法14条で定めた「法の下の平等」に反すると断じたのだ。
同性婚に対して国の動きは鈍いが、市民の意識は変わりつつある。地方自治体では既に市町間の垣根をなくす動きも始まっている。
熊本市は宣誓カップルが市外へ転出した際、改めて手続きを必要とすることが大きな精神的、経済的負担になるとし、19年10月に福岡市と、20年1月には北九州市と都市間相互利用の協定を結んだ。
性的指向や性自認にかかわらず、カップルが「共に生きていく」と決める。それは、どこに住んでいようとも変わりはないはずだ。
阪神間の連携にも期待したい。(中川 恵)