宝塚市長選 中川市政継承か刷新か 弱者支援拡充も財政面では課題
2021/04/03 05:30
土俵下のお立ち台に上り、あいさつをする宝塚市の中川智子市長(奥右)=2018年4月、宝塚市立スポーツセンター総合体育館
4日告示、11日投開票の兵庫県宝塚市長選は、3期12年にわたって続いた中川智子市政を継承するか、刷新するかが問われる。この12年間、高齢者や障害者、性的少数者らへの支援策を多く打ち出した半面、財政を好転に導けなかったとの指摘もある。
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■広告塔として
2006年と09年、2代続けて市長が汚職で辞職する事態となり、出直し市長選で当選したのが無所属の中川氏だった。不正の払しょくに努める「クリーンな人」として期待を集めた。
同性カップルの公的認定制度の導入や、「就職氷河期世代」対象の職員採用試験の実施など全国に先駆けた取り組みも。18年には大相撲巡業の土俵であいさつするのを認められず、土俵上の女人禁制に見直し議論を呼び掛けて注目された。
自身が「功績」とする施策のベスト5は表の通り。「道半ば」としたのは教育問題だ。16年に女子中学生がいじめを苦に自殺し、20年に中学柔道部顧問が体罰の傷害事件で逮捕された。「子どもの教育のあり方を考え、改革に手をつけたが、教職員組合や教委は正常化していない」とする。
■厳しい資金繰り
財政面では課題も残す。
全国27の特例市と比べると、収入に占める借金返済の割合を示す「実質公債費比率」は19年度が3・6%で14位、将来の借金負担の重さを示す「将来負担比率」は22・6%で12位となり、共に中程度に位置する。
しかし、比率が高いほど自由に使えるお金が少ないことを示す「経常収支比率」は96・9%で22位と最後方を走る。待機児童を解消し、ごみ処理場を整備するための基金積み立てにも迫られ、20~24年度財政の見通しは65億円の収支不足となる見通しだ。
大規模改修が必要な小中学校や幼稚園は20校園に上るが手が付けられていない。市道の補修は23年度までに総距離約11キロを修繕するとしながら、終了したのは14%にとどまっている。
さらに宝塚市立病院を巡っては09~20年度に腎臓内科、緩和ケア内科など診療科を10増やし、医師も43人増の120人にして運営を立て直しても、収益は類似病院の平均を下回る。隣の三田、伊丹、川西、西宮市は市立病院の統合再編に乗り出しており、出遅れを指摘する声も少なくない。
■南北格差解消
市域の7割を占める北部・西谷地区の活性化も争点になっている。
地区人口は12年前に約3千人だったのが今や2130人。小学校は1校だけで児童数は80人を割って複式学級が検討される。
そんな中、18年から2年間にわたって住民らが意見交換し、定住・移住促進に向けたルール作りや、ブランド作物の研究に着手するまちづくり計画をまとめた。市はこのほど完成させた新総合計画にこれを盛り込み、実行に移すことを明記した。
ただ、財源をどう確保し、何を優先していくか。告示はあす4日。立候補者たちが描く「新しい宝塚」に耳を傾けたい。(西尾和高)
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