ゲンジボタルが星と競演 雄雌が優雅にランデブー 猪名川町

2021/06/01 22:30

星の隙間を縫うように舞うゲンジボタル(5月30日夜、8秒露光の写真130枚を比較明合成)=猪名川町内

 里山が広がる兵庫県猪名川町のせせらぎで、ゲンジボタルの求愛行動がピークを迎えている。梅雨の晴れ間、星がまたたく夜空を見上げると、流星のようにホタルの光が頭上に降ってくる。ただ、雄雌の優雅なランデブーが人々を魅了する陰で、地元では観賞マナーの悪さに不満もくすぶっていた。(大田将之) 関連ニュース 神秘の浜、青白く“光る波”出現 兵庫・豊岡の海岸に夜光虫 妖しく輝くSFの世界、関西有数の「工場夜景」 無数の配管、重厚なタンク、計算された機能美 3密避け夜景スポット人気 「掬星台」に車殺到、苦情相次ぐ


 1級河川の猪名川が町を縦断し、いくつもの支流が走っている。水辺を好むゲンジボタルは町全域に生息し、例年5月下旬~6月上旬が見ごろだという。
 取材のため、ホタルが出そうな小川を探していると、農作業を終えた男性3人が井戸端会議をしていた。
 「この辺でホタルは見られますかね?」。車から降りてそう尋ねると、一人に強い口調でくぎを刺された。「くれぐれもマナーを守ってくれよ!」
 聞くと、これまで車やバイクの騒音、ゴミのポイ捨て、路上駐車に散々悩まされてきたとのこと。男性はそのせいでホタルの数が増えすぎないよう川草をあえて刈ることもあるという。
 井戸端会議の解散後、別の男性がぽつり。「たくさんの人に見に来てもらいたいという気持ちもあるんですけど、難しいですね」
     ◇
 町によると、町内のある川はネット上でホタルの名所と取り上げられ、人々が殺到するようになって地元から苦情が噴出した。
 だから町役場でも、ホームページや広報紙でホタルを紹介する際は、個別の川の名前や地名は伏せることが慣例になっているという。
 町の広報担当者は「清流のまちとして、ホタルは自慢の一つなんですが、地元の気持ちも痛いほど理解できる」と複雑な心境を吐露した。「ホタルは繊細な虫なので、守るためにもマナーには気を付けて観賞してほしい」と呼び掛けている。

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