「電話しながらATM」にピンときた 郵便局員「詐欺の典型じゃないか」高齢女性の被害防ぐ

2021/06/20 05:30

感謝状を受け取る尾崎勝利さん=芦屋署

 特殊詐欺の被害を未然に防いだとして、兵庫県警芦屋署は16日、芦屋高浜郵便局(芦屋市高浜町)の課長代理、尾崎勝利さん(45)に感謝状を贈った。被害に遭いそうになった79歳の女性をすかさず救えたのは、半年前の悔しい出来事があったからだという。 関連ニュース “詐欺”現場に遭遇、未然に防いだ記者が体験語る「ポイントは否定しない」 未登録のメールから「電話できる?」 だまされたふりで記者がおとり調査 結末にあ然 「5億円当選」信じる女性 信用組合と警察が必死に説得

 同署によると5月24日午後1時40分すぎ、女性が携帯電話で通話しながら郵便局に入ってきた。窓口に「ATMはどこですか?」と尋ねた後、携帯電話を耳に当てたまま現金自動預払機(ATM)へ向かった。
 その様子を見ていた尾崎さんはピンときたという。
 〈電話しながらATMって、まさに研修で学んだ詐欺被害の典型じゃないか〉
 すぐ上司に「詐欺じゃないですか」と耳打ちした。
 上司と2人で後を追うと、女性は通話しながらATMを操作していた。上司が女性から携帯を受け取り、電話の相手に「(女性の)知り合いです。あなたは誰ですか」などと問うと、通話は切れたという。
 「まさか自分がだまされるとは…」とショックを受けて震える女性に、尾崎さんは上司と共に「被害に遭う前に防げたので大丈夫ですよ」と声を掛けた。女性は市職員をかたる何者かから「保険金の還付がある」などと電話でうそをつかれて訪れていたという。
 実は、尾崎さんが今年1月に勤めていた芦屋駅前郵便局で、特殊詐欺の被害があった。「なぜあの時、防ぐことができなかったのか」。それ以来、利用客の様子には今まで以上に目を配るようにしていた。だからこそ「電話」と「ATM」の組み合わせに「ピンときた」という。
 感謝状を受け取った尾崎さんは「とにかくお客さまの大切なお金を守ることができて良かった。この経験は同僚にも伝えたい」と語った。(大田将之)

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