“空き缶”の模擬人工衛星競う大会 尼崎工業高が全国初V「強みがっちりかみ合った」

2021/06/25 05:30

「缶サット甲子園」で初優勝を果たした電気通信研究部の(左から)近藤一輝さん、浅田瑛都さん、坂本志久真さん=尼崎工業高校

 空き缶サイズに作った模擬人工衛星の性能や独創力を競う高校生の全国大会「缶サット甲子園」で、尼崎工業高校(兵庫県尼崎市長洲中通1)の電気通信研究部が初優勝した。雲の微粒子を採取できる装置を備え付け、情報をSDカードに記録することに成功。打ち上げ後のプレゼンテーションでも高評価を得た。メンバー3人は「それぞれの強みががっちりかみ合った」と喜ぶ。(竹本拓也) 関連ニュース 【写真】「インパクターは無事か?」動画プレゼンテーション 自律型ロボット競うロボカップ日本一 三田学園高生4人が世界へ 300円のモーターで勝負 目標高く、千メートル 洲本高生がロケット開発中


 缶サットは「缶」と「サテライト」(衛星)から成る造語で、大会は2008年に始まり、13回目。電子回路やセンサーを内蔵した350ミリリットルサイズの空き缶を小型ロケットに積んで上空約80メートルに打ち上げる。さらにパラシュートで降下中に調査、解析して11日後、審査員に動画で伝える。今回は全国9校の作品が発射された。
 同部に所属するのは、3年の近藤一輝さん(17)と坂本志久真(しぐま)さん(17)、2年の浅田瑛都さん(16)の3人。
 挑んだのは、雲の微粒子を採取する装置「インパクター」の開発だ。モーターで空気を吸い込み、3段構造のフィルターに粒子を付着させる仕組みで、昨年11月から手掛けてきた。
 今年はコロナ禍で部員は打ち上げ会場に行けず、郵送した缶サットを大会事務局が代理で打ち上げる様子を部室からモニター越しに見守ることとなった。
 迎えた本番、パラシュートの不具合で滞空時間が短くなったものの、缶サットは上空で2秒間、衛星として作動。動作を記録したSDカードもインパクター本体も無事だった。
 その後の動画プレゼンテーション(10分間)では、採取した微粒子を光学顕微鏡で観察した結果を報告した。黄砂や火薬の灰、PM2・5(微小粒子状物質)が確認されると、数値グラフやイラストを効果的に使いながら、部員が交代で解説のナレーションを入れた。
 同校は16年に初出場し、昨年は準優勝と優勝にあと一歩のところまで来ていた。以来、部トップの映像編集技術を持つ近藤さんを中心にプレゼンの改良にも取り組んだ。近藤さんは「事前に収録できるという強みを最大限に生かせた」と振り返る。
 知識面でチームの要となっている坂本さんも「前回は質疑応答の場面で詰まってしまったが、リモートの大会となった分緊張がほぐれてうまく話せた」とはにかんだ。
 最年少の浅田さんは「正直、まだ分からない部分が多かった。今回は先輩に助けてもらったので早く追いつき、次は優勝に貢献したい」と次を見据えた。

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