壇上の動物オブジェ「お散歩中です」修理のたび、職員が温かいメッセージ いたずらついに止まる

2021/08/04 05:30

動物のオブジェに添えられているメッセージ=メルカードむこがわ

 「モルモットさんはお散歩中です 帰ってくるまで待っていてくださいね」-。兵庫県西宮市の武庫川団地の中心にある商業施設「メルカードむこがわ」(同市高須町1)の2階ウッドデッキ広場に、そんなメッセージ板を見つけた。トラやワニ、キリン、ハリネズミ…と43体の動物オブジェが並ぶ壇上の動物園に、モルモットが欠けている。聞けば、そこには職員たちの心温まるエピソードがあった。(浮田志保) 関連ニュース 【写真】アライグマさん 【写真】トラさん 駅前に「禰豆子」や「カオナシ」出現 話題のマネキンアート、だれが制作?次回作は?


 オブジェは、ポリエチレン樹脂に炭酸カルシウムを混ぜて固めた物で作られている。壇上にはもともと花を植えていたが、ゴミのポイ捨てがひどかったため、2021年3月、施設の改修に合わせて切り替えたのだという。
 「でも、いたずらが続いて…」と、店長の田中尚美さん(54)=同県加古川市=が教えてくれた。
 設置してすぐ、一番の人気者のカエルがいつのまにか壊れ、通りがかった親子が気付いて同施設の管理事務所に報告してくれた。
 修理中、「なんでいないんだろう」と心配する子どもの声を聞いて、田中さんは「動物たちはみんなに愛されているんだ」と実感したという。そこで、さみしがらないようにとメッセージを添えることにした。
 「元気になって戻ってきます。楽しみに待っていてね」
 その後も、誰かのいたずらはやまなかった。そのたびに動物を修理に出しつつ、メッセージで子どもを元気づけようと考えた。
 「トラさんは狩りに出掛けました」
 「アライグマさんは川へ洗濯に出掛けました」
 「コブタさんはお家を建てる材料を探しに行ったよ」
 徐々にシャレを効かせると、メッセージ板も商業施設のちょっとした名物に。大切にしているという思いが通じたのか、いたずらはついに止まった。
 「子どもから大人まで、オブジェで自然に笑顔になってもらいたい」と田中さん。最近はメッセージを書くことも減ったという。
 では冒頭に戻り、モルモットさんはなんで「お散歩中」なの? 
 「これは老朽化で足元の固定具が折れてしまったんです。いたずらではないんですよ」。あしからず。

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