衆院選「SNS」でも熱戦があった… 趣味の「バリ舞踊」や三木谷氏の応援など試行錯誤

2021/11/05 05:30

バリ舞踊のメークを紹介する小村潤氏の動画

 解散から投開票までが戦後最短となった今回の衆院選は、会員制交流サイト(SNS)を駆使した戦いがこれまで以上に熱を帯びた。有権者に直接会う機会が少ないコロナ禍でも活動をアピールできる手段として期待され、各陣営はユーチューブやツイッターで試行錯誤を繰り広げた。阪神間の兵庫6、7、8区の主な動きを振り返る。(村上貴浩) 関連ニュース 買収約束の疑い、維新当選者陣営の男逮捕 兵庫4区、運動員に報酬1日1万3千円 ツイッター、インスタ、ユーチューブ… 立候補者、SNS発信を駆使 選挙指南役、高まる存在感 コロナ禍でPR戦略重要に


 とりわけ目を引いたのは8区の共産党・小村潤氏。趣味の「バリ舞踊」で特有の化粧をする様子をユーチューブに投稿した。
 顔の彫りが深くなるよう鼻筋に影を描いたり、まぶたを赤、青、黄色に塗ったり。髪飾り、イヤリングも着けて華やかに変身すると、メッセージを書いた紙を手にこう読み上げた。
 「誰もが、自分らしく輝ける社会をつくる 日本共産党」
 陣営は「小村さんの多彩さを知ってもらい、人となりを見てもらうための動画」と強調。支援者からの反応も良く、選挙公約はもちろん、SNSは個性をPRできる貴重な手段になったという。
 7区の立憲民主党・安田真理氏はツイッターに注力した。フォロワーは1万人に上り、1日10本以上の更新を欠かさなかった。
 「今日も頑張りましょう」「選挙戦もあと半日!。今こそ逆転ホームラン」
 そんな書き込みに加え、視聴者を意識した「あいさつ動画」やユニークな企画動画も次々と投稿した。
 中でも約1800回視聴された動画は「ツイッターにアップできる上限2分20秒でJR西宮から事務所に着けるのか」と題し、全力疾走する自身を映しだしながら、こう声を上げた。
 「安田真理! 諦めてはいけない!」
 ネットを使った選挙運動は2013年の公選法改正で解禁され、支持基盤が弱くても知名度を上げられるとして若手を中心にあの手この手が模索されている。著名人の応援を得やすい、との強みもあるという。
 話題になったのが、6区の日本維新の会・市村浩一郎氏のホームページだ。楽天の三木谷浩史社長が2分間にわたって応援メッセージを寄せた。
 動画で三木谷氏は、市村氏を同じ一橋大学の卒業生だと伝え、普段から日本の将来ビジョンについて話し合っていると紹介。「新しい未来の枠組みをつくろうとしている市村さんは心から応援できる一人」と呼び掛けると、陣営は「選挙戦では間違いなく追い風になった」と手応えを語った。
 一方で、SNSには閲覧者がコメントできる機能もあり、心ない書き込みが寄せられることもある。8区のれいわ新選組・辻恵氏は街頭での演説をネット上で生中継すると、政党批判にもさらされた。
 ただ、陣営は「SNSの投稿には党全体で細心の注意を払っている」としつつ、こう付け加えた。
 「選挙だから多少の批判なら構わない。反応はないより、ある方がいいんですよ」
■スマホ普及、法の想定外
 「れいわ新選組、共産党、社民党、立憲民主党に投票しよう!!」「選挙に行って自民党、国民民主党に投票しよう!」
 今回の衆院選では、ツイッター上でこんな書き込みが散見された。これっていいのだろうか?
 2013年成立の改正公選法はネットを使った選挙活動を解禁したが、政党と候補者以外の有権者が「○○氏に投票しよう」などのメッセージを電子メールで第三者に送る行為は禁止されている。しかし、ラインやツイッターなどのSNSを使う場合は問題がない。
 それは総務省が「電子メールは第三者によるなりすましやウイルス感染の可能性が高い」とし、ラインやツイッターにも同じ危険性はあるのにもかかわらず、公選法では言及がないためだ。
 同省の統計によると、公選法が改正された8年前はスマホが普及し始めたばかりで、ツイッターやラインを使うのは少数派だった。しかし今や国民の89・4%がスマホを所有し、ツイッターは42・3%、ラインは90・3%が利用している。
 衆院選の取材中、各陣営から「これって放置していいのでしょうか」との声を聞くたび、時代の早さと規制の遅れを思わざるを得ない。(村上貴浩)

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