<リカイってなに?>当事者が語るLGBT「カミングアウト、葛藤のはざま」 浅利圭一郎さん(中)
2021/12/30 05:30
性の多様性をテーマに講演活動を続ける浅利圭一郎さん=札幌市内
性的指向(セクシュアリティー)をカミングアウトするなどというのは、異性愛者の多くの人にとっては一生なじみのない体験だと思います。
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「世間」は異性愛を当然のようにしてつくられているので、日常でそんな場面を想像するのも難しいかもしれません。裏を返せば、われわれLGBTQといわれる性的マイノリティーにとっては、恋愛や性的指向に関わる事柄に当たるたびに「カミングアウトするか、しないか」を常に突きつけられながら生きているといってもよいのです。
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初めて自分がゲイであると周囲にカミングアウトしたのは30代後半でした。
仕事で知り合った同年代の知人が、10代からゲイのコミュニティーに入って友人を得ながら自由に振る舞っているのを知ります。長らく自分の性的指向を認められずに葛藤してきた私は、そんな彼がうらやましくて仕方がありませんでした。
同時に「自分は何を恐れているのだろう。あっという間に歳をとるし人生も短いのに、ばかばかしい」と、怒りにも似た思いがこみ上げてきました。そこで「関連した話題になった時、信頼できる人には打ち明けよう」と思うようになり、まずは2人の妹と近しい友人数名に話しました。
すると、みんなこう言うのです。「何となくわかっていた」「あなたへの見方は変わらない」。恐れを抱いてきた自分にとって、拍子抜けするほど自然な受け入れ方でした。
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ただ、自分の場合はたまたまそうだったというだけです。カミングアウトによって心ない発言を浴びたり、関係がぎくしゃくしたり、本人の許可なくセクシュアリティーをばらされたりして「言わなかった方がまし」という結果を生むこともあります。
例えば、親に異性と結婚しないのかを聞かれ続け、ごまかし続けている知人もいます。「カミングアウトして楽になるのは自分だけ。年老いた親がそれを知って理解できず、悲しい思いをさせるくらいなら一生言わない」と話しています。
カミングアウトによる相手の反応や関係性はそれぞれでしょうし、「言う方が不幸になる」と決めつけるのは当事者側の思い込みかもしれません。しかし、多くの当事者は、そんな恐れから消極的に「クローゼット」(打ち明けない)の選択をしている現実もあるのです。(寄稿)
【あさり・けいいちろう】記者・編集者「ハーモニクス」代表。1975年、札幌市生まれ。法政大学文学部卒業後、神戸新聞社販売局企画開発部や雑誌編集者、十勝毎日新聞社札幌常駐記者を経て2020年から現職。著書に「決めごとのきまりゴト~1人1票からはじめる民主主義~」。